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パパパパ

インターネットは僕の嫁。Webサービスについて色々書いていきます。

リーン・スタートアップを実践して分かった5つのこと

Tokyo Otaku Modeというスタートアップで働いている安宅です。日本のポップカルチャーを海外に発信するサービスを運営しています。

今回は「リーン・スタートアップ」を実践してみて分かったことを書いてみたいと思います。「リーン・スタートアップ」の考え方は、すでにかなり浸透していると思います。Tokyo Otaku Modeでもサービスづくりや様々な場面で実践しています。今回は、そんな日々の実践の中から分かったことをまとめてみました。ちなみに、エントリー中の“引用”は書籍の『リーン・スタートアップ』を社内向け資料として要点を分かりやすくまとめたものです。社内向けの資料は、専門用語に詳しくない人でもすんなり理解できるように、あえてやさしい日本語にしています。

ところで最近、18歳の頃から可愛がっていた22歳のエンジニアが、僕らのやっていることに刺激されて、自分でスタートアップを始めるということで独立しました。このエントリーはその彼に捧げます。GOOD LUCK!

 

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リーン・スタートアップとは

そもそもリーン・スタートアップとは何なのでしょうか?

・新規事業やスタートアップを運営するときに、もっとも早く、お金もかけずに成功するための方法です

・ちょっとずつ進歩をくりかえすことで、成功への道を見つけだすやり方です

・いまはどんなものを作って売れば成功するのか分かりづらい時代です。お客さんが何を考えて、何を欲しがっているのか知るのは難しいことです

・リーン・スタートアップは、お客さんが何を求めているのか学びながら進んでいく方法です

・お客さんが欲しがらないものにたくさんのお金と時間を使って大失敗!になってしまうことを防ぐための考え方です・いまの時代に会社を作って成功するためには、多くの小さな失敗をしなければなりません。小さな失敗から学んで進むことで、本当に大きな失敗(会社がダメになる)をさけます

 Tokyo Otaku Modeで一番最初に実践した「リーン・スタートアップ」は、立ち上げ時にFacebookページからスタートしたという点に尽きると思います。Facebookページを公開した2011年3月24日は、Facebookの国内ユーザーは約300万人でしたが(mixi全盛時代)、海外ユーザーはすでに5億人を超えていて、数年以内に国内でもNo.1 SNSに成長するという予測が出ていた時期でした。初期のTokyo Otaku Modeはニュースを配信していたので、例えば、Wordpressなどのブログシステムや自社サイト、自社アプリを作るところからスタートすることもできました。ただ、当時は創業メンバー全員が本業を持っていたということもあり、最小限、最短、最小コストでサービスを立ち上げようという考えで進めていました。企画やコンセプトを決める時間を除けば、立ち上げまでの「開発」は1分で完了という、まさに「リーン・スタートアップ」を体現したような立ち上げになりました。Facebookページによるニュースメディア運営は、サーバー代なし、開発コストなしであるだけでなく、「Like」や「Share」によってユーザー自身も発信力を持ち合わせた、まさに理想的なプラットホームでした。さらに、Facebookページはサイトやアプリと違い、「できること」が制限されていることもあり、Facebookページのファン数をどうやって集めるかという点だけに限られたリソースと時間を集中できたことも良かったのだと思います。

ところで、僕が「リーン・スタートアップ」を考えるとき、いつも思い浮かべるのが、受託開発と新規事業の差です。僕は受託開発もTokyo Otaku Modeのようにスタートアップとして新しい事業を創り出すことも、両方とも経験がありますが、同じモノづくりでも、うまく進めるための考え方は正反対だなといつも思います。受託開発では、お客さんに製品を100点の完成品で納品することが求められます。一方、新規事業の場合は、そもそも評価するお客さんが0人から始まるため、最初から100点は絶対に狙えません。だったら、最初は自分の中で50点でも、最低限動く製品をスピード重視で作り上げて、とにかく早くお客さんに製品を見てもらうことが大切です。もし、50点を60点にして、「お金をはらうよ」とお客さんが言ってくれたらしめたもの。プラス10点の機能を実装すれば、お金を支払う本当のお客さんを獲得できるのです。

受託開発の考え方に染まっていると、この50点でお客さんに製品を見せることに抵抗があることが多いようです。不完全の製品を作っているので、人にバカにされることもあります。でも、本当のお客さんは実は最初の最初は誰もいないのです。自分の頭の中で想像した製品は、ほぼ間違いなくお客さんは求めてない、という考えをしっかり持って、プライドや恥じらいを捨てることができるか。あっという間に環境が変化する世界の中で、スピードを重視してモノづくりができるかどうか。これが「リーン・スタートアップ」を実践できるかどうかの明暗を分けると思います。Tokyo Otaku Modeでも、運営にかかわるメンバー全員がこうした考え方を持って取り組むようにしています。


リーン・スタートアップをはじめる前に決めておきたいこと

「リーン・スタートアップ」を実践する前に、決めておいたほうがいいことがあります。

・どうして会社を作るのか、何のために作るのか決めましょう

・次に、その目的を果たすためにどんな製品を作ればいいのか考えましょう

 いわゆる会社のビジョンというやつです。成功したスタートアップが最初から立派なビジョンを持っていたかというと、僕が知るかぎりは半々くらいの確率で持っていなかったケースが多いです(笑)が、成功に向かうどこかのタイミングでは、ビジョンは必ず重要になってきます。「何をするべきか」「やるべきこと」「やらないこと」を明確にするための羅針盤がビジョンです。ビジョンが最初に定まっていれば、自ずとどんなサービスを作ればいいかがわかるし、大きいものから小さなものまで、あらゆる決断をするときの心の拠り所になります。もし、ビジョンがまだないなら、時間を作って、メンバーでビジョンを作ると良いと思います。

ちなみに、Tokyo Otaku Modeでは、数ヶ月に一度くらいのペースでコアメンバーを中心に2泊3日の合宿を開き、ビジョンやミッション、年間を通じてなすべきことを決めています。ここで決めたことをすべて実践できているかというとそうではないのですが(言っちゃった)、でも数ヶ月後に振り返ると、話し合った時点では夢の様な話だったことが、なぜか実現してしまっていたりということを何回も体験しているので、みんなが共通のビジョンを共有しあうことにより、視点を高く持てるようになり、自分たち以上の力を発揮できるということなのでしょう。

リーン・スタートアップの進め方

「リーン・スタートアップ」を実践する方法についてまとめました。

「おためし品」の制作・どんなものを作ればいいのか考えましたか?

では、その考えだしたものを、一番簡単に作ってみましょう

・この時、すごい製品をはじめから作ってはいけません。本当に簡単でいいです。動けばそれでいいくらいです

・できるだけ小さくはじめることがポイントです「おためし品」の意味

 

Q. なぜ、「おためし品」を作るの?

A. それを使う人の反応を見るためです。そして、製品を作るためのお金と時間を節約するためです。はじめに「これは売れる、使える!」と思いこんで、手間とお金をかけて作ったものを出して、失敗したら、それを作るために使ったお金と時間がムダになります。「おためし品」で、お客さんの反応を見ましょう。最低限使えるくらいのものを作ったら、お客さんに見せます

 

お客さんの反応は?

・自分が思っていた通りに使ってくれていますか?

・自分が思っていた通りにたくさんの人が使うようになりましたか?

・何が自分の考えとちがいましたか?お客さんの反応をもとに、製品を変えていきましょう

・「おためし品」をお客さんに見せて、使ってもらって、分かったことをまとめましょう

・そしてもう一度、「どんなものを作ればいいのか」を考えます

・ 考えたものをもとに、製品に少しずつ、少しずつ新しい機能をつけていきます

・機能をつけるたびにお客さんの反応を見て、また、何が足りないのか考えて、新機能をつけて……をくり返していきます

 

「おためし品」を作るメリット

・「おためし品」へのお客さんの反応を見て、少しずつお客さんが欲しいものに製品を近づけていくことで、お金も時間も節約できます

・どれだけすごい製品でも、お客さんが欲しくないものを作ってしまっては意味がありません

・お客さんはどれだけ時間をかけたか、どれだけ苦労したかは見てくれません

・「おためし品」を使って、お客さんが求めるものを上手に作っていきましょう

 「おためし品」は、いわゆるプロトタイプのことです。お客さんは実際に使える製品を触ってみて、はじめてフィードバックを返すことができます。いくら上手に言葉で説明しても、自分の頭の中をそのままお客さんに伝えることはできませんし、そもそも実際に製品を作るまで、自分でも固まっていない仕様があるはずです。実際に作ってみることで、お客さんに見せられる形になって反応を得られるだけでなく、運用する上での問題点や課題が出てきます。事前に「おためし品」ということを伝えれば、今後お金を払うかもしれないお客さんも使ってくれるはずです。Webサービスではβバージョンやαバージョンとつけて、未完成品ですよ、ということをアピールしましょう。ちなみに、Tokyo Otaku ModeのWebサイトもまだβバージョンで、日々改善を続けています。

僕もそうだったのですが、Webサービスの開発寄りの人間は、直接お客さんからフィードバックをもらうというのは、すこし億劫で、手間だなぁと思うことが多いのですが、シリコンバレーのシードアクセラレーターの500 Startupsで口を酸っぱくして言われたのは、お客さんとは必ず面と向かって話すことということでした。実践してみると、たしかにメールやWeb上のアンケート、アクセス解析からは得られない貴重なフィードバックを得られることが多いのです。

 ところで、「最低限使えるくらいのもの」のラインは人によって考え方が分かれる部分です。「最低限といっても、綺麗なデザインは必要だろう」「ランキングページは必要だろう」「会員登録の仕組みは必要だろう」といった、他のサービスと比較して足りていない機能を実装したくなるのが人の常。でも、最低限は本当に最低限。動けばいいというレベルで線引できるかどうかも、「リーン・スタートアップ」の実践において、決断を迫られるところです。場合によっては、システム化せずに紙に書いたものを見せて、サービスのニーズを探る、なんてことも手法のひとつかもしれません。


ちなみに、Tokyo Otaku Modeでは、日本のアニメグッズを海外に販売する海外ECを主力事業として進めていっていますが、最初は複数商品を購入できるショッピングカート機能という、ECでは当たり前の機能さえなかったのです。僕が考える海外ECの最低限の機能は、「商品が買える」「商品がお客さんに届く」こと。これ以上は「リーン・スタートアップ」の概念からすると余計な機能です。「複数の商品がまとめて買える」機能はおろか、最初は「購入ページ」が1枚あるだけで、「トップページ」も「商品の一覧ページ」もありませんでした。そもそもニュースメディアだったTokyo Otaku Modeのファンが海外ECというサービスを使ってくれるかどうかわからない状況では、「お客さんが海外ECサービスを使ってくれるかどうか」の検証がまず先なのですね。

もし、最初から100点を狙って1年~2年かけて「完成品」を作ったあとに、実は、Tokyo Otaku Modeのファンは海外ECサービスに興味がなかったら……。こうしたリスクを避けられるのが、「リーン・スタートアップ」の効用だと思います。

うまくいかない時は

「リーン・スタートアップ」を進めていき、うまくいかない状況に陥ったときにどうすればよいでしょうか。

「やりなおし」について

・「おためし品」でお客さんの反応を見て、製品を良くして……を繰り返しても、お客さんに「いいね!」と言ってもらえなくなった時

・どうやってもお客さんが離れて行ってしまうような時

→「やりなおし」しましょう「やりなおし」とは

・これ以上どんなに頑張ってもダメ……という時は、さっさと考えを切り替えて新しいやり方を試してみましょう

・この決断が遅いと、会社がダメになることもあります。注意深く、いつするべきか決めましょう

 

「やりなおし」の方法、その一

・「ズームイン」:それまでやってきたことの中で、うまくいっている部分のみに集中します

・「ズームアウト」:それまで作ってきたものは、もっと大きなものの一部だと考えます例:とあるショッピングサイト

・特別な商品だけを売るサイト → うまく売上がのびない…… 色々なものを売るサイトに変える

・「ターゲットをかえる」:製品を売る相手をかえます

・「作っているものを変える」:お客さんが欲しいものを売るようにします。売っているものをお客さんが欲しがらない時に考えましょう

 

「やりなおし」の方法、その二

・「売り方を変える」 たくさん作って安く売るか、少しだけ作ってで高く売るか、あるいは売る場所を変えてみましょう

・「見かたを変える」 自分たちの目的のために、どんなことを実現しなければいけないかを考えて、進み方を変えましょう

 「やりなおし」とは、いわゆる「ピボット」のことです。Tokyo Otaku Modeのことではないですが、僕自身は、個人で色々なWebサービスを作っていたときに、いやというほど「やりなおし」を経験しています。その頃は「リーン・スタートアップ」という考え方はなかったですが、Webサービスのプロトタイプを作って、実際に使ってもらうユーザーからフィードバックをたくさんもらいました。フィードバックをもらいながら、このサービスは求められていないということが分かったり、お金を払うまでには至らないということが分かったこともあります。そういうときは、ためらわず「やりなおし」してきました。「やりなおし」した後に、似たようなサービスがうまくいってしまった例もあるので、そういうときは自分の力不足を感じたりもしますが、結局は自分自身で「やり遂げる」ことができなければ、成功とはいえないので、「やりなおし」することにためらってはいけないのですね。

僕は、「リーン・スタートアップ」の考え方はスタートアップを成功に導くためのものだけではなく、日常の業務でもとても役に立つと考えており、社内向けにこうした資料を作っているのもそのためです。例えば、上司から「A社向けの企画書を作っておいて」と言われたケースを考えてみましょう。もし、指示がこれだけだったら、最初から完成形を作ってはいけません。これだと上司(=お客さん)が求めているものを作ることは至難の業です。小さく始める、最低限のものでフィードバックをもらう、という考え方があれば、まずは詳しくヒアリングするなり、企画書の目次を書いて、上司に確認してもらおうというアイディアが浮かぶでしょう。求めている方向性がバッチリ合ってから、資料の肉付けをしていけばいいのです。最初から資料の「デザイン」や「表組」にこだわって、方向性を見誤っては、それにかけた時間が無駄になってしまいます。

「リーン・スタートアップ」の本質はなにかと考えると、僕は仕事上でたくさんのトライ・アンド・エラーをして良い文化、もっというと積極的に失敗していこうという文化を作ることなんだと思います。失敗は誰もがしたくないものですが、失敗をしないと成功はつかめない、それがスタートアップの世界だと感じます。僕も毎日のように失敗しています。つい先日も、けっこうな額のお金を失う「失敗」をしました。ただ、その失敗により、そのやり方がダメだと検証されたので、今度は別のやり方を試すきっかけになりました。成功に近づくために必要だった失敗でした、と自分自身や周りのメンバーが思えるかどうか。こうした文化が、スピード全開で進むスタートアップの世界では重視されるのだと思います。

最後に、「リーン・スタートアップ」を実践して分かったこと5つをまとめます。

  1. 50点でもお客さんの前に出して、直接フィードバックをもらうことが大事
  2. サービスや機能だけでなく、日常のささいな業務にも応用が効く
  3. 最小限は本当に最小限、他サービスは気にしない
  4. 「やりなおし」はためらわず、強い気持ちで行う
  5. 失敗が成功につながるという考え方を育むことが大切

 

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東日本大震災が起こった月、すなわち2011年3月に立ち上げたTokyo Otaku ModeのFacebookページは、1,300万人を超える海外ファンを獲得しています。99.8%が海外の方です。ファンや支援者に支えられて2年半ほどの月日が流れました。あの震災は一時的に日本を絶望の淵に落としましたが、僕らは僕らでしかできないことをやろうと、インターネットと日本の最強のコンテンツである、アニメ/漫画/ゲームを武器に、世界に明るい日本の未来を示していけたらという想いでここまで続けてきています。つい先日起こったフィリピンの大震災でも、僭越ながら励ましのメッセージを投稿したところ、フィリピンの方だけでなく、世界中の本当に大勢の方から温かいコメントが届き、あらためてTokyo Otaku Modeのなすべき使命のようなものを感じたところです。ファンの方や企業からの期待は感じつつも、まだやりたいことの数%も実現していない、というのが本当のところです。Tokyo Otaku Modeはまだまだこれからのサービスであり、随時メンバーを募集しています。もし僕やTokyo Otaku Modeに興味があったら、一度お話ししませんか?お気軽に h_ataka[a]tokyootakumode.com までプロフィールを送ってください。