パパパパ

解説系YouTuberが思いついたことを書きます

なぜブロックチェーンなのか?スタートアップ界隈で知っておきたい5つのこと

Tokyo Otaku Modeという海外へ日本のオタク文化を発信している活動をしている安宅です。先日から、有安さんが立ち上げたスタートアップの起業家が集まるLINEグループ「スタートアップ界隈」に参加させていただいています。つい最近、ブロックチェーンの活用について質問があったので回答しようと思ったのですが、いつも通り長くなるのでブログの記事にして答えてみようと思います。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

 

1. オンライン完結ビジネスのリベンジマッチがはじまっている

ざっくりいってしまうと、インターネットビジネスがスタートアップでも大きく台頭できていたのは、オンラインで完結するビジネスであれば、恐ろしいほどスピーディーに世界中に広げていくことができる恵まれた環境下で、初期コストもかからず、かつ少人数であっても知的生産性中心に勝負できていたからです。

ところがインターネットが実用化してから20年経ち、近年のスタートアップはオンライン完結のビジネスはもうやり尽くされていて、IT系スタートアップといえども「オフライン」も組み合わせてビジネスをしていくフェーズ、もしくはほぼ中身はオフラインビジネスで”側だけオンライン”というスタートアップも少なくない状況にあります。これはこれでなかなかGAFAを超えるようなスケーラビリティを持つサービスが生まれづらい成熟段階になってしまったともいえます。

ところが、ブロックチェーンを活用をすると、勝者がほぼ確定しているオンライン完結のビジネスをもう一周やり直すこと、あるいはいまからでもGAFAに対抗ができるのではという期待が出てきているのです。「ソーシャル」の概念が生まれた時に、FacebookやInstagramが出現したり、ソーシャルゲームといった新しいジャンルが切り開かれたように、まだ新しい技術であるブロックチェーンでオンライン完結ビジネスの”リベンジマッチ”がいま行われようとしています。

 

 

2. ユニコーンを遥かに凌ぐ企業が生まれてきている

スタートアップ起業家の視点に立つと、企業価値が1,000億円超えの事業を作ること、いわゆるユニコーン企業になることがひとつの目標としている起業家も少なくないと思います。

企業価値の観点でいえば、日本国内ではビットフライヤー、リキッドなどの取引所はすでにユニコーンに到達していると言われていますし、その決算公告には驚くべき数値が並んでいますが、これはまだまだ序の口です。ブロックチェーン業界内でもっとも衝撃的な企業は約1年でドイツ銀行を超える利益を叩き出した世界最大の取引所バイナンスであり、ブロックチェーンを活用してトラストレスで「資金調達」を行えるようにしてしまったイーサリアムです。

特に、イーサリアムは2015年の開始からわずか4年で時価総額は2兆円超えを果たし、ユニコーンを20倍の価値をわずか4年で成し遂げてしまいました(個人的に時価総額の話ばかりでためらわれるのですが、数値で社会的インパクトを示す上で理解しやすいためこうして書いています)。イーサリアムは『世界中の価値の移転』という重要な機能を担っていることに加えて、ブロックチェーンだからこそできた、企業の枠を超えた共創モデルになっていることがこの短期間の間にありえないほどの成長を果たした要因になっています。ブロックチェーンを活用すると、1社のためでなく、コミュニティ全体のための非中央集権的な設計ができ、大企業やスタートアップや個人などすべての力を同じ方向に結集させて、スタートアップ1社ではとても実現できないスピーディーかつパワフルな事業成長を描けることが、イーサリアムの出現によって証明されているのです。

ちなみに、ここでいう時価総額はイーサリアムのトークン全体の価値なので、イーサリアムを運用するイーサリアム財団の時価総額とは一致していない(見積もれていない)ということを付記しておきます。

 

 

3. デッド/エクイティに次ぐ第3の選択肢=トークンによる調達

スタートアップでは、事業やプロジェクトは資金調達なしには語れません。これまでの歴史上、その調達方法は、基本的には「株式(エクイティ)」「デッド(借入)」のふたつしかありませんでした。そこに突如として現れたのが、ブロックチェーンを使った「トークン」による調達です。「トークンによる調達?」といってもイメージが湧きづらいかと思いますので、ざっくり説明すると、「ブロックチェーン上に誰も改ざんできない株券のようなものを誰でも発行できるようになり、世界中の誰でも売買が可能になってしまった」ということです。

そして、前述のイーサリアムは、「事業やスタートアップを興すときに必要な『資金調達』をトークンで簡単にできるようにしてしまった」のです。すでに数千億円以上の調達がイーサリアムを通して行われています。(資金調達以外の使い道もたくさんありますが)その社会的インパクトがこの時価総額にあらわれているのです。トークンで資金調達するときに必ずイーサリアムが必要になる構造になっているため、いわば国家や金融機関なしで株式の仕組みを作って運用されてしまっているということです。

日本国内におけるトークン(NFT含む)による資金調達というのも、すでに成功例がいくつも出てきており、直近ではクリプトスペルズがスタートアップの資金調達にはとても有意義なものになっています。この記事 は資金調達を検討されている方は目を通しておくと、新しい世界が開けると思います。

スタートアップの起業家にとってエクイティとならぶ新たな資金調達の仕組みができ、かつ資本主義のルールにおいて、投資した側が経営や事業に対してガバナンスを効かせられる(口をはさめる)というのは、ビジネスにもよりますがメリデメが確実に存在します。その選択肢を知らないまま起業して、「こんなことになるなんて」と数年後に後悔するより、いままさに目の前で起こっている世界の資金調達の情勢をしっかり把握し、資本政策という大事な意思決定をできることにこしたことはありません。トークン(NFT含む)は2015年から急に生まれた第3の選択肢なので、耳慣れないかもしれませんが、知っておいて損はないことだと思います。

 

 

4. トークン活用でサービスの作り方が変わる

価値を移転させることが気軽にできる『トークンエコノミー』の世界では、事業やビジネスの成功がトークンの価値を上げることになるため、そこに参加するいち利用者も事業やサービスの成功を願うようになり、特にSNSやイベントなどを通じて有志が自発的に事業やサービスを草の根的盛り上げを行なってくれるようになります。これらはいわば、スタートアップでいうストックオプションを、社員だけでなく、利用者にも配ることができることを意味していて、個々人が自然と自社サービスを盛り上げてくれるような共犯関係を作りやすくなります。

また、利用者もトークンを通じて「ステークホルダー」になることで、より利用者にフレンドリーなサービスが生まれることも期待されます。例えば、中毒性の高いゲームを作ったとしても、やりすぎて健康被害が出るようなサービスとなると利用者は反対の意思を表明するはずです。利用者も含めて全員がステークホルダーとなることで、サービスに関わるみんなが同じ方向を向いた意思決定が促されるのです。より良い社会の実現のための有力な手段になると考えられています。

 

 

5. 現実からバーチャルへ価値が流れ込むのはこれから

インターネットの情報には(コピーがゼロ円でできてしまうから)価値がつけられず、現実世界と比べても、例えばデジタルで描かれた絵でも画集として紙で販売すると1,000円の価値がつくのに、デジタル画像だと1,000円の価値が出しづらい、という現象が起こっていました。

そう考えると、現実世界の価値がインターネットの中へ価値移転がほとんどなされてこなかった、ということに気づかされるでしょう。(価値の移転ができないインターネットが当たり前になりすぎて、そうした重要な事実にも気づけないくらいになってしまっていますが)。考えてみれば、有名イラストレーターの絵が、紙で販売する時に価値があって、バーチャルになると価値がゼロに近づくというのは不自然だったのです。

ところが、ブロックチェーンを使うと、いままで価値がゼロだったインターネット上の情報に価値をつけることができます。(詳しいシステムの話はここでは省きますが、)ビットコインもそのデータを辿ればただの英数字の一行に過ぎないのにも関わらず、1枚100万円近くの価値がついているということが、その証明です。みんなで監視し合うことで、みんなで信頼を担保しあっているのです。

インターネットが生まれて、バーチャル世界で過ごす時間が急激に増えていっています。ひとりの人間として現実での世界と同等かそれ以上の生活時間をバーチャル世界で過ごすとしたら、そこに現実世界でいう「家」や「服」や「絵」など「衣食住」などで現実世界では価値がついているものを揃えていくことはなんら不思議ではありません。ただ、これまではそうしたバーチャル世界にはコピーができて価値がつけづらかったため、価値をつけずに流通させてしまっていただけで、今後はこうしたデジタル上のものにも価値がついて資産性も帯びさせることができます。

デジタルで創作したものに価値がつきだすと、これまで現実世界で価値を売買していた世界がバーチャルへも展開されて、現実世界からバーチャルへの流れは今後止まらなくなるでしょう。紙幣がデジタル通貨へ、創作物がデジタルへ、バーチャル世界の「衣食住」もデジタルで価値を持ち、そしてそのときに資産性を帯びさせることができたら……。バーチャル世界の限定のフェラーリが世界に1つだけと証明して、仮に1億円しても資産性を帯びて1億円以上の価値を持ち続ける、なんてこともブロックチェーンによって実現できてしまうのです。

現実世界からバーチャルな世界への価値移転はまだこれから始まるところです。現実に価値があると思われているあらゆるモノがバーチャル上でも価値を持ち出す時、私たちが見てきたインターネットはまったく別のなにかに変わっていくのだと真剣に考えています。

 

 

以上なにかのお役に立てましたら幸いです。ブロックチェーンがより良い社会の手段になることを願っています。

 

最近は、Tokyo Honyaku Questというサービスをリリースしたりしています。舞台裏のブログもよろしければご覧ください。Twitterアカウントはこちらです、よろしければフォローしてください!感想など@付きで送っていただけると励みになります。

いまブロックチェーンで知っておきたい10のこと【2019年9月編】

2017年秋から約2年の間、インターネットに次ぐ革命と言われている「ブロックチェーン」に身を投じて分かったこと、業界関係なくぜひ知っておきたいことをまとめました。いまブロックチェーン技術を使って何が起こっていて、なぜ熱狂的な人々がいるのかが感じ取っていただけたら嬉しいです。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

 

1. 4年で時価総額2兆円の経済圏

ブロックチェーンと仮想通貨は密接なものではありますが、ブロックチェーンの使いみちは仮想通貨だけにとどまりません。とはいえ、ビットコインをはじめ仮想通貨は「株やFXのようなもの」として、取引所で毎日価格が上がった下がったで、投機やギャンブルのようなイメージが付いてしまっているかと思います。

しかしながら、多くの仮想通貨には、円やドル、株やFXのような法定通貨にはない機能が備わっており、その中でもっとも有名なのが「イーサリアム」です。「イーサリアム」をざっくり説明すると、「ブロックチェーン上にプログラムをおいて実行できる」機能を持っています。当時19歳のロシアの天才エンジニア・ヴィタリックが構想し、ベータ版を公開したのが2015年。それからわずか4年間で時価総額がなんと2兆円の規模(2019年9月時点)まで成長させてしまったのです。単純比較はできませんが、1,000億円でユニコーンと呼ばれるスタートアップ企業と比較しても、この期間でこの規模感まで成長したことは驚異的でしょう。



2. 資金調達に大革命「株<<<トークン」

さまざまな事業やプロジェクトは資金調達=お金集めから始まることがほとんどです。これまでの歴史上、その調達方法は、基本的には「株式(エクイティ)」「デッド(借入)」のふたつしかありませんでした。特に、株による調達は、17世紀のはじめに株式会社である東インド会社が成立させた方式で、400年以上も続く長い歴史の積み重ねで、とても良くできた仕組みに磨かれてきました。

そこに突如として現れたのが、ブロックチェーンを使った「トークン」による調達だった、というわけです。「トークンによる調達?」といってもイメージが湧きづらいかと思いますので、ざっくり説明すると、「ブロックチェーン上に誰も改ざんできない株券のようなものを誰でも発行できるようになり、世界中の誰でも売買が可能になってしまった」ということです。しかも、これは国家や銀行などの大きな力や信用がなしで成立してしまったのです。この調達部分を称して「ICO」と呼ばれています。

ブロックチェーン業界においては、2017年以降、株式による調達額よりもトークンによる調達額が上回ってしまい、資本主義社会の「投資家」からのお金の流れに大変革が起こってしまいました。実際に法定通貨に交換できる金銭的価値を帯びるトークンが価値をもったため、人はその『お金』によって事業やプロジェクトをダイナミックに進めることができ、さまざまなブロックチェーン系のサービスが生まれ、社会実装が一段と進むことになったのです。

ちなみに、このトークンの発行や売買をかんたんに行うことができる仕組みを提供しているのが、「イーサリアム」なのです。

3. NY証券取引所を超える取引所?

説明に入る前に、ここで株式による資金調達の仕組みを少しだけおさらいしてみましょう。

例えば、スタートアップに投資する投資家は、まだ時価総額が低いうちに円やドルを出資し、その代わりに会社の未公開株をもらいうけます。その会社が順調に成長して東証などに上場すると、出資した分の株を市場に売ることができます。人気のある銘柄であれば上場すると時価総額が跳ね上がるので、未公開株の時点で出資していた投資家はその差額分で利益を出すことができるわけです。

株式の歴史は長く、当時はインターネットもありませんから、各国の金融機関・証券会社などのローカルの範囲で売買ができるようになっていて、基本的には国や地域に根ざした仕組みになっています。

ここで突然、トークンによる資金調達が登場すると、これまで一部のエンジェル投資家やVC=ベンチャーキャピタルだけが購入できていた未公開株を、インターネットとブロックチェーンの繋がりによって、”世界中の誰もが自由に未公開株のようなトークンを売買できてしまう”、ことになったのです。これで世界中のお金の流れが変わってしまいました。

日本で有名な仮想通貨取引所といえば、コインチェックやbitFlyerなどがありますが、その時価総額や業績にびっくりした人も多かったと思います。その世界版というべき存在が「バイナンス」という取引所です。この取引所は、人類史上最速で成長している会社とも呼ばれ、わずか2年でドイツ銀行以上の収益、NY証券取引所に肉薄するという驚異的な成長を見せているのです。このペースで成長を続けると、どこかではNY証券取引所さえも超えるという話も出ているくらい、世界中の人々によりトークンの売買がさかんに行われているのです。

さきほど、株式による資金調達のあと東証への上場という話をしました。トークンの場合の上場先は・・・そう、こうした仮想通貨取引所になるわけです。上場にはさまざまな目的がありますが、大きな目的のひとつは、市場からの資金調達をしやすくなることです。もし、世界中にオープンな「バイナンス」に上場するとしたら、市場からの資金調達もよりダイナミックなものになる可能性が高いのです。

4. 安倍総理やTOYOTA/ソニーも前向き

とはいえ、ブロックチェーンや仮想通貨は事件ばかり起こっていて、リスクの塊、あやしいし近づきたくない、という声も多いことも事実です。歴史が浅い分、まだ技術的にも法律的にも定まっていないこともあり、「失敗」もたくさん起こっています。

しかしながら、インターネットも出てきた当初も、こんな回線が重たいものは使い物にならない、違法音楽のダウンロードで使うくらいなもんだろう、これで通販をする時代なんてこない、なんて散々な言われようだったのです。インターネットもブロックチェーンも技術としては有用性が認められているため、そうした一定の失敗を繰り返しながら、実用化に向けて前に進むべきタイミングに来ています。インターネットでAmazonが本を売り出したのは1994年でした。Google創業は1998年、Facebookも2004年です。いまや生活に欠かせないほどの影響力を持ち出したのは、ちょっと早いくらいのタイミングでサービスを提供していたのですね。

そうした状況を鑑みて、2018年11月26日の参議院・予算委員会にて、安倍総理はブロックチェーン技術について、「暗号通貨のほか、金融に限らず様々な分野において活用の可能性がある。」と述べ、企業の生産性向上や、様々なサービスの利便性・安全性向上に繋がると発言しました。経済産業省が行うJ-LOD(日本発のコンテンツ等の海外展開を促進するための補助金制度)も2019年から急遽、ブロックチェーン開発費用も対象になり、手前味噌ながら私たちが進めているファンの力で翻訳する「Tokyo Honyaku Quest」(その舞台裏のブロク記事)も採択されました。

また、さきの「イーサリアム」はすでにTOYOTA/ソニー/マイクロソフトなど大手企業も実証実験に参画しており、まさにいまどの企業であっても取り組みを開始するタイミングであると示唆しているのです。


5. 改ざんできない自動執行プログラム

冒頭で、「イーサリアム」の機能として、「ブロックチェーン上にプログラムをおいて実行できる」と書きました。これはすなわち、そこに乗せたプログラム=ルールは改ざんできないし、システムが自動的に執行されることを意味します。これらの総称を『スマートコントラクト』と呼びます。

この仕組を日本の年金で説明すると、日本政府はかつて「若いうちに毎月一定額を払うと60歳になったら毎月一定額のお金をもらえます」と宣言して年金制度をはじめました。ところが、予定よりも少子化が加速したり年金の運用がうまくいかなくなると、突然、「60歳ではなく65歳から支払うことにします」と”改ざん”してしまったのです。『スマートコントラクト』であれば、こうした中央集権的な存在がおらず、勝手に変更することはできないですし、お金の振込さえ自動的に執行される仕組みにできるため、関わるみんなが安心してシステムに任せることができるのです。

さて、「イーサリアム」でこの仕組みを活用した一大プロジェクトがはじまります。その名は「The DAO」。ひとことで説明すると、「世界中のイーサリアム保有者の資金を1箇所に集めてファンドを作り、運用のしかたを投資した人たちの投票によって決めよう」という仕組みです。通常、ファンド運用は、ファンドマネージャーがベンチャー企業を選定し、評価をし、交渉し、どれくらいの投資をするかを”中央集権的”に決めていきます(厳密には資金の出し元のLPにも配慮・説明などはありますが割愛します)。

「The DAO」では、これらの集金・投票・出資・リターンの分配までをすべてスマートコントラクト上で実現することで、当時の金額で160億円分の「イーサリアム」を集めることに成功するのです。そして、そのファンド資金をもとに、さまざまなプロジェクトや企業への投資が投票に基づき自動執行され、そのリターンをトークンを通じて世界中の出資者へリターンを自動的に分配される仕組みが動き出したのです。

・・・残念ながらこのシステムには重大なバグがありました。そこを突かれ大規模な流出事件が起こってしまい「The DAO」は頓挫します。ですが、この思想や仕組みはきっとさまざまな業界やコミュニティで利用できるはずで、こうした事例を糧にして次なる挑戦が行われようとしています。


6. 広告に頼らないメディアが成立

インターネット上では無料で使えるサービスがいくつもあります。特に、ニュースメディアやSNSなどは、無料で気軽に利用できて、たくさんのユーザーを集めて人気を出していきます。こうしたサービスはどこで運営を成り立たせているかというと、動画やバナーなどの「広告」の仕組みです。商品やサービスを販売したい会社=広告主が、こうしたメディアを通じて自社の商品やサービスを売り込み、その広告枠を提供することで、広告費用をメディアをもらいうけます。

時代が進むに連れ、広告の効果はメディアによって差が出てくることが分かってきました。特に、ユーザーにマッチした広告を出せるかどうか、ターゲティングやセグメンテーションが大事になってくるのです。これらの精度をあげるためには、メディアにアクセスしている人たちのユーザー情報をたくさん集めて行く必要が出てきました。そうして、さまざまなインターネット企業が個人情報のデータを共通化したり、中には個人情報の販売ビジネスまではじまっていくのです。

こうして個人情報を集めてビジネスを最大化したい企業と、知らずないうちに個人情報を渡してしまっている利用者の間に大きな溝ができてしまいました。

そんな中、ブロックチェーンを活用することで、広告に頼らないメディアが作れるのではないか、それを実践し成立しているメディアが「Steemit」です。このサービスは利用者が記事を書くと、法定通貨と交換可能なトークンをもらえ、読者から送らえる「いいね」にもトークンが付与できます。その日のホット記事になると、1記事で1万円相当になるので、「Steemit」で暮らせる人たちが出てきており、元来のメディアなら支払うべき、ライターやエディターへの費用がほとんどかからず成り立ってしまっているのです。さらに、ここでもらえるトークンは価値が変動するストックオプションのような性質も帯びているため、「Steemit」のサービスが大きなればなるほど、その資産価値が高まるため、ライターやエディターひいては読者までもが「Steemit」の成功を願い、同じ方向を向いてサービスが運営されているのです。

これまで「広告」に頼らないといけなかったインターネットサービスの大半が、価値をなめらかに移転できるブロックチェーンを活用することで、「広告」に頼らないメディア運営の選択肢が出てきたわけです。動画配信にしてもSNSにしても、冒頭やタイムラインに広告が流れるのはユーザー体験としてはデメリットになっており、これらが解決する事例としても注目されています。


7. デジタルなのに世界でひとつを証明

デジタルの世界の素晴らしい特徴のひとつは、完全なコピーがとれることでした。しかし、完全なコピーがとれることで、デジタル上で生まれた制作物はコピーし放題のため、実質的な価値がゼロに近づいていってしまうことになります。

ところが、ブロックチェーン技術の「NFT」という技術を使うと、デジタルデータを「マスター」と「レプリカ」とを区別して、世界でひとつを証明することができるようになったのです。すると、ビットコイン(のローマ字+数値の羅列)が100万円相当の価値を持ったように、「マスター」のデジタルデータはアート的価値を持つようになりました。

その事例がアート領域では「Master Works」や「スタートバーン」などではじまり、コンテンツ領域では、あの進撃の巨人のデジタルデータを公式的に販売した「Anique」というサービスです。いわばデジタル資産ともいうべき新しい概念です。この仕組はソーシャルゲームのカードゲームなどでも多数の事例が出てきていて、ブロックチェーン技術の利用用途の中でも大本命といわれています。

8. 利用者もステークホルダーとなることで良い社会へ

これまでの株式会社は仕組み上、株主と消費者の目的が不一致になるケースが起こりやすく、必ずしもみんながハッピーになる方向の意思決定がされないことが多々あります。

飲食店を例に説明しましょう。短期的リターンを求める株主は、長期的には健康被害が出ると分かっている材料や素材を使うことで飲食店の売上が高まるとしたら、それを妨げることはしないでしょう。逆に健康的だけど原価が高い材料や素材を使って利益を圧迫するとしたら、それには反対するかもしれません。

一方で、「Steemit」で書いたトークンの世界は、利用者もトークンを通じて「ステークホルダー」になります。飲食店の例で言えば、利用者自身が健康被害が出るような意思決定には反発するはずで、関係者が全員ステークホルダーとなることで、みんなが同じ方向を向いた意思決定が促されるのです。会社におけるストックオプションがコミュニティや関係者全員が持ち合うと捉えるとイメージしやすいかもしれません。

これが『トークンエコノミー』が注目される理由のひとつであり、より良い社会の実現のための有力な手段になると考えられています。


9. 価値移転でついにネットが現実に勝る

インターネットによって情報の移転がなめらかになりました。

ブロックチェーンによって価値の移転もなめらかになってしまうでしょう。

いまやアメリカで起こった事件も日本にいながら瞬時に知ることができるし、日本のタレントのひとことがSNSを通じて拡散され、誰もが情報のやりとりがなめらかになっていきました。

私たちインターネット世代は、リアルな世界にも素晴らしい価値を認めつつも、世界中がその中でつながってしまうネット世界に魅せられてきました。ところが、いま思えば、インターネットだけでは足りない機能がひとつあったのです。デジタルデータがコピーし放題の世界において情報の価値がゼロに近づいてしまうことが示すように、ネットやデジタル上で「価値」を付加することが難しかったのです。

ところが、ブロックチェーンがその残りのピースを埋める存在として活用できることが分かってきました。ブロックチェーンは価値をデジタル上に確かに存在させ、かつ価値の移転をなめらかにします。いま、円やドルを筆頭とする金銭的価値は世界中でなめらかには移転していません。オンラインバイキングで口座にある日本円を遠い世界のブラジルのレアルに替えるとしたら、諸々手続きや手数料などがかかり、大きなボトルネックがあります。価値のなめらかさを道で例えると、日本とブラジルには『高速道路』はまだ開通していないのです。

トークンなどを活用することで、法定通貨を超える利便性やデメリットを解消して、しかも特定の国のレギュレーションにしばられることなく、共通のよりよい社会と価値移転の形を模索していけるようになります。

この『高速道路』は、ついに現実からインターネットの世界にブロックチェーン技術によって繋がり、価値がほとんど流通できなかったインターネットの世界に価値が流れ込んでいっています。まさにいまこの瞬間にひたすら現実からネットの世界に流れ込んでいっています。その流れの象徴が冒頭に書いた「イーサリアム」や「バイナンス」の台頭であり、「NFT」を活用したデジタル資産だったりします。VR世界の土地や建物も資産性を持ったり、VR美術館に”本物のデジタルアート”を飾って観覧手数料をトークンでもらったり、いずれネットの中の価値が現実を上回る時代がやってくる言われているのです。


10. 改正法案が2020年春施行、新時代幕開け

世界に先駆け、通称・仮想通貨法が成立した2016年当時、日本はブロックチェーン業界において世界の最先端を走っていました。その後、さまざまな事件が起こり、業界は自粛モードに突入しました。

しかし、2019年6月仮想通貨法の改正法案が衆参両議院で可決され、1年以内=2020年6月までの施行が確定しています。中身はすでに各所で公になっている通り、取引所の運営体制、AML(マネーロンダリング対策)などの厳格化で、「誰でもかんたんに使えた」状態より、少しハードルが上がる分、より安全なものになっていく見込みです。

第3の調達方法として歴史的な発明となった「ICO」は、誰でもかんたんに資金調達ができた分、詐欺プロジェクトが横行した経緯もあり、今後は信頼できる取引所を通じた「IEO」が法的に認めらえるようになります。

あらゆるプロジェクトやサービスの成長には資金が必要で、そのためのあらたな調達の手段が増えた時、それは日本人が手にする世界で戦うための最高の「刀」になるはずです。来年の新時代への期待が高まるばかりの今日このごろです。



以上なにかのお役に立てましたら幸いです。「お金」や「経済」の話が多めの記事でしたが、儲かる・儲からないということを伝えたいわけではなく、社会的インパクトをあらわすひとつの指標として用いています。ブロックチェーンがより良い社会の手段になることを願っています。

 

本業はTokyo Otaku Modeという会社で日本のオタク文化を世界に発信していたり、オタクコインという構想をお手伝いしたり、Tokyo Honyaku Questというサービスをリリースしたり、今度こんなイベントにも登壇します。Twitterアカウントはこちらです、よろしければフォローしてください!感想など@付きで送っていただけると励みになります。

 

長文を読んでくれてありがとうございます。まだ書ききれなかったことも多いのでまた次回お会いしましょう。

20代のうちにやっておいたほうがいい20のこと

Tokyo Otaku Mode(以下TOM)の安宅です。

先日社内で、とあるインターン生から「20代のうちにしておけばよかった!やっててよかった!と思っていることを教えてほしいです」という話があがり、僕なりに考えていたことを伝えました。今回のエントリーはその内容のまとめです。

僕は1980年生まれで、2014年現在34歳です。気づいたら、大学卒業後から10年以上も経過していて、20代を振り返ると、あの時にやっていたことが今に繋がっていると感じるものも多くあります。僕は特殊な経歴を歩んできているので、万人に通じるものではないと思いますが、タイムトラベルして20代の僕に会えるなら、やっておくように伝えたいことを書きたいと思います。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

目の前のことに全力で取り組む

仕事でもプライベートでも、周囲にいる人が驚くくらい何かに取り組むということが非常に大事だと思います。何かを得ようと目の前の仕事に全身全霊を捧げて全力で取り組んでいる人には、色々なチャンスが巡ってきます。

ちなみに、僕が20代で全力で取り組んだ例を挙げると、

  • とあるオンラインゲームで遊んでいた5年間のうち、プレイ時間が3年だった(かつ、最大同時に4台4キャラクターを動かして別人として演じていた) → ファミ通(エンターブレイン)から攻略本の話が来て3冊出版
  • 毎週日曜日、朝から深夜まで開発合宿を開いて、2年以上ほぼ休まず続けていた → 後に一緒に働くことになるエンジニアさんやデザイナーさんと多く出会えた
  • 365日中360日、仕事上の誰かと飲んでいた → 巡り巡ってTOM創業メンバーに出会った
  • 個人サイトのプロモーションのために、ブロガーに1年間、毎日100通以上のメールを送っていた → サイトから収入を得られ自活できるようになった ※最終的に企業へバイアウト

などがあります。ネタみたいな話もありますが、あとから振り返ると、行動を起こしたときには、想像もつかないようなことが実際に起こっています。あれやこれや考えるよりは、目の前のことに全力で取り組むという姿勢が大事だと思います。

 

自分が好きなことを見つける

仕事でも趣味でも、自分が好きなことは長続きするし、大変でも辛くはないものです。趣味のように仕事をして、仕事のように趣味をする。といった感じで、20代のうちに起きている時間すべてを捧げられることを見つけられると良いですね。僕もゲームが大好きで、趣味が高じてお仕事としてゲーム攻略本の世界に飛び込みました。

今は、そのジャンルやテーマでトップになればなんでも職業になる時代です。トップになるのは並大抵ではないかもしれませんが、趣味でも仕事でも好きなことに徹底的に打ち込むことが、道を切り開く近道だと思います。

 

ひとつのことを極める

仕事柄、特にスタートアップの色々な人と話をしていると、若い頃に何かひとつのことを極めていて、その努力なり考え方なりをビジネスに応用している人がかなり多いと感じます。これくらい努力すればこうなる、こういう成果が出る、といったプラスの想像力がついていくからかもしれません。極める内容はなんでも良いと思います。とにかくそのテーマやジャンルでトップになること。知識を深めてもいいし、一番有名になる、マイナーなスポーツでNo.1になるでも良いと思います。シンプルに何かのトップを目指すために、あらゆる努力を厭わないマインドを持つと良いでしょう。

 

良い人やモノに出会える機会を逃さない

まだ出会って間もない、とある社長Aさんの飲み会にお誘いいただいたことがありました。正直、その社長Aさんとはまだそこまで関係が深くなかったのですが、せっかくのお誘いだと思い、参加しました。その飲み会で、知り合ったのが、地元が近い先輩Bさんでした。そして、今度はその先輩Bさんが主催する飲み会に何度もお呼ばれするようになりました。何度目かの飲み会の時に同席していたのが、後に一緒にTOMの創業を行う亀井でした。いまから振り返ると、最初のAさんの飲み会を断っていたら、その後の展開は生まれず、TOM創業は立ち消えていたはずです。人とのご縁は巡り合わせなんだということを改めて実感します。

時間がとれる20代だからこそ、メリット・デメリットを考えず、積極的に人脈を広げ、良い出会いを自ら手に入れていけると良いと思います。

 

ギブ・アンド・ギブの精神を持つ

20代の頃は貯金も無いし、お金の余裕も無いので、目先の利益に行動が左右されがちです。「これは自分にメリットがあるだろうか?」という損得勘定で動くと、相手にも伝わりますし、相手からしたら、あなたからのギブもないのにテイクを要求されているようなもので、いわゆる”ケチくさい人”のレッテルが貼られるのがオチです。まずは、自らギブして、相手が「そんなにしてもらって悪いなぁ」という感情が自然と湧き出るまでギブし続けることで、テイクできたらラッキーくらいに考えることが大事です。

ちなみに、自分が「ギブした」と思うことと、相手が「ギブされた」と感じるポイントは一致しないことがよくあります。人によって感じ方はまったく異なるので、相手をよく見ず、「これだけしてあげたんだから、これくらいのテイクしてもいいだろう」と利益を取りにいくと、うまくいかないことが多いので注意しましょう。

 

一歩を踏み出す勇気を持つ

僕もそうでしたが、20代は経験もスキルもないので、あらゆることに自信が無いのは、ある意味当然のことです。その中で一歩一歩前に進めるかどうかは、ちょっとした勇気を持てるかどうかにかかっていることが多いように思います。

頭の中では理想形が見えていても、どうしても前に進める勇気がない。僕も自分自身の能力やスキルが無いから、とあるコミュニティに入るのをためらっていたことがありました。そのコミュニティで何ができるのか、入って何もできないのではないかと考えすぎていました。ただ、踏み込むだけで死ぬわけでもないし、とりあえず考えないで飛び込んでみないと何も始まらないと思い飛び込んでみると、たいていは心配が杞憂であることが分かります。例えば、そのコミュニティのトップの人に連絡して会ってみたいと伝える、たったそれだけのことで、大きく人生が変わることがあります。

 

明日会社がなくなっても生きていけるだけのスキルを磨く

社会人として日々食べていくためのスキルを磨くという考えは、僕が26歳位からプログラミングを勉強しだした時に考えていたことの1つです。社会人なりたての頃には、会社からお給料が出なくなったら生きていけない、という強迫観念のようなものが重くのしかかっている気がします。実際、お金を稼ぐスキルというのは、よほどのことがないと、大学を卒業したての人に備わっている能力ではありません。逆に言うと、どんなスキルであっても、お金を稼いで生きていけるという人は強いです。そういう人は会社員だったとしても、思い切った行動を取れるし、大きな成果を上げるためのダイナミックな動き方ができます。さらに言えば、いつクビを切られてもなんとでもなるという自信と度胸から、たいてい物事がうまく回り出します。

20代のうちに、そうしたスキルを身につけることは、のちの人生を豊かに過ごすための一番の近道だと思います。

 

自分のポートフォリオになるアウトプットを作る

出会う人に、自分が何者かという説明をするときに、積み上げてきたポートフォリオを分かりやすく見せられる形にしておくと、仕事でもプライベートでも「あの人はこういうことが得意な人」ということが伝わり、プラスな展開が生まれやすくなります。

僕の場合はブログです。ブログを読んでもらえれば、僕という人間がどういう人で、どういう人生を歩んできているかが分かるように、ひとつひとつ時間をかけて記事を書いてきています。ブログを通じて、さまざまな出会いをしてきて、いまの自分に繋がっていると感じているので、ポートフォリオになるようなアウトプットは本当におすすめしたいことのひとつです。

ネットを使えば絵や動画や音声など、アウトプットの手段はたくさんあります。人によってアウトプットの仕方は得手不得手があると思うので、自分の得意分野で行うとよいでしょう。

 

イライラ・カリカリしない

今考えると、20代の僕は毎日のように何かにイライラし、カリカリしていた気がします。極端な話、毎日通る道で、信号が赤になっただけでもイライラ、お店であとから来たお客さんの注文の順番が入れ替わっただけでもイライラ。いやはや近寄りがたい存在だったと思います。この間、10年以上前に同じ会社にいた10歳上の先輩に会い、そのときにその先輩の胸ぐらを掴んだ事件もあったなと、笑いながら言われたのですが、まったく記憶にありませんでした。そのくらい日常的にキレていたのですね。とあるオンラインサッカーゲームの対戦協力プレイで、なんど言っても「パス」をしてくれない相手がいて、コントローラーに八つ当りをして5個以上壊したこともありました(笑)

20代という生物学的なものもきっとあるのだと思いますが、それにしてもイライラ・カリカリしていて、いいことなんてまるで無かったですね。ニコニコして、毎日を楽しく過ごすほうが、あらゆる面でハッピーな方向に向かっていきます。

30歳を超えてくると、怒るのもパワーが必要ということが分かり、だんだん落ち着いてきました。が、今になって考えてみると20代の頃にイライラしていたのは、自信がないことを隠そうとしていたのかなと感じます。威圧することで威厳を保とうとし、弱い自分を見せないようにしていたのですね。これはまったく不必要なパワーの使い方です。そんなことにパワーを使うのであれば、まずは精神を落ち着けて、少しでも良い時間の使い方をするべき、と自戒を込めて伝えたいです。

 

自分の期待値をコントロールし、ポジティブに考える

「あらゆることで、自分の想定したとおりに物事が進むなんてことは稀」ということを、20代の時に知っておけば、また違った人生だったかも……。そう思えるくらい、自分に対する期待値コントロールは大切だと思います。

友だちや恋人と日曜日に遊ぶ約束をしていたけど、都合が悪くなってキャンセルになる、といったことはよくありますが、それでがっかりして落ち込んだり、仕事へのやる気を無くしたりするのは、まったくもって人生のプラスになりません。

色々と対処法はあるかもしれませんが、僕の場合は必要以上に、悪いことを想定し、期待値を最低レベルにするようにしています。普通に進んだら超ラッキーくらいに考えておくと、毎日ハッピーになれますね。日曜日の予定にしても、自分が風邪を引いたり、仕事がトラブって日曜日も働くはめになったりと、不可抗力で想定外のことが起こることは本当によくあります。

起きた事象に対して、それをどう捉えるかで、人生を楽しく過ごせるかが決まってきます。遊ぶときに雨が降ったとしても、「雨か〜。嫌だな。」と思わずに、「雨の日だから雨の日じゃないとできないことをしよう。」と前向きになれると良いですよね。

 

ネガティブな発言を控える/ポジティブな発言に変える

人は基本的にネガティブな発想をしがちだと思います。だからこそ、だれもがポジティブな人が好きで、ネガティブな人は敬遠されがちになります。敬遠されると、人と人との繋がりからのプラスの展開が起こりづらくなります。

人が話す内容はそのままその人の印象をかたち作るので、ネガティブな発言をしていないか細心の注意を払って、ポジティブな表現、言い回しに変えるということを、ぜひおすすめしたいです。

  

自分だったらこうするを考え続ける

僕は大学卒業後、5年近くゲーム攻略本を制作する小さな編集プロダクションに在籍していたのですが、上司がどういうときにどう考え、どう行動し、どうジャッジするかを観察してきました。自分だったらこうするのに、という視点を常に持ち、時には我慢し、時には反対意見も言っていました。周りの人の行動や考え方を、相手の視点に置き換えて「自分だったら」を考えて仕事に取り組むようにしていました。

その時に自分で考えた経験が、いま考えると身体に刷り込まれていて、色々な状況に対応できるようになっています。どうせ上司が決めるからといって、自分の考えを放棄しないこと、大きいことから小さいことまで、必ずいちど自分で考えるというマインドが大事です。

 

決まっていない未来に悩まない

未来のことについてあれこれ悩んで時間を使うのはもったいないことです。悩む時間があるのなら、目の前のことに全力を尽くすことが大事だと思います。数年後のことを心配しても、明日死ぬかもしれないし、死ななくても今のように脳がちゃんと働かなかったり、身体が動かせなくなる可能性だってあります。

僕が20代の頃は、まさか自分が経営者になっているとは思っていませんでした。人生何が起こるか分からないものです。20代のうちは、体力もあり、人生の中で身体も一番ピンピンしている時期です。先のことよりも、とにかく「今」を見つめ、がむしゃらに生きることをおすすめします。

 

人からの評価を気にしすぎない

何か新しいことをやろうとした時に、親や上司や恋人や友だちなど周りの目は、自分の可能性を小さく閉じ込めがちです。しかも、強い想いがなければ、自分自身に言い訳をして、諦める口実にもなってしまいます。他人に影響されて腹落ちせずに決めたことは、必ず後悔がつきまといます。そういった後悔を持っている人は、周りにいる人からの評価を気にし過ぎなんだと思います。

同じアクションをしたときでも、それをまったく評価しない人もいれば、絶賛してくれる人もいます。世の中の価値観は、本当に多種多様です。逆に言えば、アクションの評価は必ず賛否両論があることも覚悟しないといけません。だから、自分が正しいと思うことを突き進む以外は、正解などありはしません。たった一度きりの人生、かつ、時間も限られた人生、頭や身体がクリアに働いてくれる時間は本当に少ないです。しかも、死んだら何も残りません。自分自身で自分の人生の決断をしないのなら、生きていても死んでいるのと同じです。しょせん人は人ですから、他人の評価にとらわれず、自分の軸をしっかり持って生きるべきかと思います。20代のときに確固たる自分なりの評価軸を持てると良いですね。

 

現状に絶望しない

給料は少ない、貯金も無い、仕事のスキルも無い、仕事上の人脈も無い、業界もひどい下降トレンド。僕自身、20代の頃を振り返ると、絶望的な状況にいたように思います。しかし20代においては、数年の努力で取り巻く環境や自分自身も大きく変わります。そういう状況の中で、希望を捨てずに、今やるべきことが何なのかを考えて行動することができれば、道は開けます。目の前のことを一所懸命に行う、将来に向けてスキルを磨く、人との繋がりを作るための行動を起こすなど、やれることはただ実行に移すのみです。(ただし、みんなが驚いて目を丸くするくらいのことを!)

 

実家を出て一人暮らしをする

実家に暮らしていると、家賃は払わないケースも多いし、ご飯も勝手に出てきて生きていけちゃうんですよね。そうすると生活費への焦りがないので、もっと頑張ろうという気力が湧いてこなかったりします。親も一生いるわけではないし、どこかで自分だけで生活していかなければいけないと、頭では分かっているのだけど、遠い未来に感じて甘えてしまいます。

20代のときの一番の不安は、自分で生活費を稼いで「自活」できて、社会人としてやっていけるのかどうかではないかなと思います。でも、今は何のスキルも無いし、かといってどこかに就職しても一生安泰なんてことも無い時代だし、という葛藤はたいていの人が持っているのではないでしょうか。実家から抜け出すと、最低でも家賃と食費/生活費は稼がないと死んでしまうので、生きるための張り合いがでてきます。自然と「自活」する方向に向かうことになるので、いま実家暮らしでやる気が出てこない人には、おすすめの方法です。

 

読書の習慣をつける

ちょっと壮大な話になりますが、人類が発展してきた大きな理由のひとつが「文字」による知識の継承というのは、よく聞く話かと思います。知識を口頭で伝えるしかなかった時代から、文字が発明されて、その人が死んだ後も共有されたから、技術や文化が発展したのですね。口頭で伝えることは時間と場所を制約するので、文字で残し、文字を読み取るという繰り返しは、知識を効率的に得る上でもっともすぐれた伝達手段なのだと思います。

僕が入ったゲームの攻略本の会社で唯一あった福利厚生が、(漫画を除く)書籍なら毎月いくらでも経費で落ちるというものでした。毎日経費で本を買って読んでいたので、読書好き(≒情報ジャンキー)になった気がします。20代の頃は、雑誌、小説、ビジネス書、自己啓発本もなにもかも新鮮で、平均すると毎日1冊は読んでいたと思います。業界関係なく、情報収集は社会人の一般スキルです。特に、僕らがいる業界は移り変わりの激しい業界なので、ニュースやノウハウを息を吸うように活字から情報を吸収できると、常に最先端で有利に仕事を進められるようになります。

 

食べられるうちにラーメン店や高級飲食店めぐり

30代になると、食べる前に色々考えてしまう食べ物があるんですね。その代表はラーメンです。20代の頃は、いくらラーメンを食べても太らなかったので、悪友と一緒にラーメン二郎の各店舗を食べ歩いたりしていました。ひどいときはランチで二郎を2軒ハシゴしたりして、今考えてもよく意味がわからないことをしたものです。

また、世の中の美味しいもの・高級な食事を食べ歩くというのは、社会経験として若いうちにたくさんやってると、いざというときにスマートに楽しめるようになるのでおすすめです。僕は友人と毎月1回、1人1万円を超えるお店で食事をするルールを作って、いろいろなお店に行っていました。政治家が通うような離れのある高級割烹に通されて、乾杯するまでの10分間近く、着物姿の女将が三つ指をついた姿勢で待っていました。最初に見た時は、本当にこういう世界があるのかと衝撃を受けたことを、いまだに憶えています。

 

贅沢に時間を使ってぶらり旅/海外旅行

社会人として働き出すと、まとまった時間が取れなくなるというのは本当です。特に、日本の大学生ならば単位を取り終わった4年生の時に、あてもなく旅に出たり、海外旅行にいったりすることも多いと思います。

僕のぶらり旅経験で思い出に残っているのは、突発的に長崎のハウステンボスに行ったことですね。急に思い立って、ほぼ何も準備もせずレンタカーで東京から出発。最初は高速代がもったいないと一般道で走っていたのですが、初日に静岡までしか行けなくて、諦めて高速に乗りました。ちょうど台風も来てて、日産マーチの軽い車体が横にふっとばされそうになりながら、結局、サービスエリアで車中泊3日して、ようやくハウステンボスに到着。ああいう贅沢な時間の使い方と、体力を考えると、やっておいてよかったなぁと思います。ちなみに、ハウステンボスは、いまは見事な復活を遂げていますが、当時は倒産寸前で活力がなく、たいして面白くなかった印象が残っています(笑)

 

自分でコントロールできないものに悩まない

僕が20代で気づけなかったことで、やり直したい筆頭がこれです。「あの人がこうしてくれたらいいのに!」と自分でコントロール不能なものに対して悩まないこと。どんなに不平不満を言っても、自分では解決できないので、非常に悪いネガティブ・ループに陥りがちです。このことは、もっと早く気付けたらよかったと、いまでも思います。

自分でコントロールできない範囲のことを延々と悩み続けても、結局、解決するのは相手次第。それでは他人に自分の人生を決断を預けていることと一緒です。自分の人生なので、自分でコントロールできる時間や範囲を増やしていくことができると、悩みや苦しみは減っていきます。


以上、参考になるものがあれば幸いです。


Tokyo Otaku Modeでは20代のうちから世界を股にかけて活躍する情熱を持ったメンバーを募集しています。もし僕やTokyo Otaku Modeに興味があったら、一度お話ししませんか?お気軽に h_ataka[a]tokyootakumode.com までプロフィールを送ってください。Wantedlyでも募集しています。

スタートアップは「失敗」を積極的にするもの

Tokyo Otaku Mode(以下、TOM)の安宅です。

「失敗は成功のもと」「失敗を恐れるな」などとよく言いますが、やはり「失敗はしたくないもの、隠したいもの」と失敗自体をよくないものだと思っている方や、「失敗したときにどう思われるだろう、できないやつだと思われるのではないか」と周りの目を気にして不安になってしまっている方は多いのではないかと思います。僕自身、数十のWebサービスをつくったり、スタートアップの立ち上げをしたりと、これまでいろいろな経験をする中で多くの失敗をしてきました。その時は「やってしまった」と落ち込むこともありましたが、失敗をしなければ成し得なかった成功を何度も経験することで、次第に失敗を前向きなものだと捉えるようになってきました。特にスタートアップにおいては、失敗をすることは重要な経験になりえます。今回は、僕がそう考えている理由について書いてみたいと思います。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加



1. なによりもスピードが大事

「巧遅(こうち)は拙速(せっそく)に如かず」という格言があります。これは「出来が良くて時間がかかるよりも、たとえ出来は悪くとも速くこなすほうがよい」という意味の言葉です。ひとつ前のエントリーにも書きましたが、スタートアップで働くうえで、一番に意識しなければいけないのはスピード感であり、「まずやってみる」というマインドを持つことはとても大事です。最初からすべて完ぺきにやろうとすると時間がかかってしまうので、小さなミスはしていったほうが、仕事は断然に速く進みます。出来上がったものが50点の状態で、そこにミスが含まれていたとしても、足りていない部分があったとしても、まずはそれでOK、そこから100点を目指してスピーディーに動けばよいのです。

ただ、このときにひとつ注意すべきことがあります。それは、間違えてはいけないポイントをおさえること。クリティカルなミス、またはクリティカルなミスに繋がるミスはしないように進めることが大事です。

例えば、作成している資料の文字のミスについて考えてみましょう。簡単な社内説明用の資料であれば、いくつか文字に間違いがあっても、速く作ることを優先させてよいでしょう。説明時に気づいたらその場で口頭で説明すれば何も問題ありません。しかし、それが大事な取引先へのプレゼン資料なのであれば、何度も見直して、ミスをなくすことが大事です。また、見積書や請求書など金銭のやり取りにかかわる書面についても、記載した金額に間違いがないか時間をかけてチェックする必要があります。

自分が抱えている業務で、どういう失敗をするとどういう問題が起こるのか常に意識し、今行っている業務は例えミスがあっても短時間で行うべきか、それとも、ここでミスがあると信用を失ったり、解決するのに時間やコストがかかる大きな問題に繋がったりする可能性があるから時間をかけてチェックするべきか、考えたうえで取り掛かることが大切ですね。



2. 失敗は成功へのプロセスの一部

以前、こちらのエントリーで詳しくまとめましたが、TOMは事業を遂行する際、様々な場面においてリーン・スタートアップを実践しています。僕はリーン・スタートアップで核となるのは「小さな失敗を積み重ねることにより、成功への道を進んでいく」という考え方だと思っています。

通常は「失敗」というと”結果”を意味しますが、リーンの考え方においては「失敗」は結果であるとともに、”プロセス”のひとつです。仮説を設定し、検証し、仮説どおりであればそのまま進み、仮説と結果が違う場合、つまり「失敗」した場合には、方向転換(ピボット)をし、新たな仮説を設定します。つまり、「失敗」は進むか、方向転換するかを判断するための材料であり、最終的な成功への道の途中経過です。「失敗」で終わりではないのです。

TOMは、Facebookページからスタートし、多くの海外のファンを獲得、その後オリジナルサイト otakumode.com (以下、.com )を開設しました。Facebookページのファンに、.comにうまく流入してもらえるように、何度もA/Bテストを行いました。(詳しくはTOMのTech BLOGに書いていますので、ぜひ見てみてください。)A/Bテストも、言ってみれば失敗の検証です。やってみて、「失敗」したことにより、はじめて何が「正解」が分かるのです。

また、現在TOMでは、日本のアニメグッズを海外に販売するECを主力事業として行っています。これから大きく成長させていかなければいけない発展途上の事業ではありますが、これまでにも、多くの仮説と検証、そして失敗を日々繰り返してきました。

EC事業で扱う商品については、ざっくり言うと「日本発祥のものでエンタメ要素のあるもの」というルールがあります。このルールから外れない範囲で、挑戦的な商品を新たに取り扱ってみることはよく行っています。普段扱っていないようなネタっぽい商品を扱ってみて、想定外にバカ売れしたり、まったく売れないということもあります。

逆に、販売を始める前から「これは絶対売れる」と直感する商品もあります。ある時、見つけた商品は仕入れ価格で4万円くらいする高額なものだったのですが、これは売れるという確信があり、心意気を示す意味でも、自腹で商品の仕入れを行いました。そして意気揚々とECでの販売を開始したのですが、蓋を開けてみれば商品は売れず。完全な失敗です。原因は当時ECを利用してくれていたお客さんの層に対しては販売価格が高すぎたことや、商品の対応言語が日本語だったために英語圏のお客さんの購入意欲に繋がらなかったためでした。この学びを活かして、今ECを利用してくれているお客さんがどれくらいの価格の商品なら購入してくれるのかを分析するようになったり、言葉の壁は予想以上に高いことが分かりったりと、多くの学びがありました。(身銭を切っている分、余計に身にしみます(笑))

なんでもかんでも挑戦してみればよいというわけではありません。しかし、挑戦しなければ、失敗もできません。失敗しなければ、そこから学びを得ることはできません。挑戦するかしないかギリギリのラインを見極める力や、「迷うのであれば挑戦してみよう!」という決断力をメンバーひとりひとりが身につけ、成功への道を進んでいけるとよいですね。



3. 失敗によって組織も人も成長する

部下が失敗したときに、頭ごなしに叱ったり、責める人がいますが、僕はなるべくしないように心がけています。

第一の理由は、失敗の原因は、仕組みが悪いことがほとんどだからです。人を責めずに、仕組みを責めなければいけません。人間だから失敗するのは当たり前です。機械だってバグがあればミスを起こすのですから。人は失敗するという前提を持ち、その中でまずは失敗をできるだけ極限まで減らせる仕組みを作ることが大切です。

失敗を引き起こしてしまう要因がある仕組みの中で、誰かが失敗をしたとき、その一人を責めるとどうなるでしょうか。その一人はもう同じ失敗はしなくなるかもしれません。それ自体はよいことです。しかし、結局仕組みが直っていない場合には、きっとまた別の人が同じ失敗をしてしまいます。そういった仕組みの中で人がミスしないように気をつけるよりも、仕組みを改善させるほうが先決です。

例えば、その業務を行うためのマニュアルが用意されているか。そこには、必要なチェック項目が網羅されているか。例えば、Webサイトの入力画面で、入力してほしい項目を必須項目にしてあるか。メールアドレスの入力欄はローマ字しか入力できないようにしているか。普段から「ミスが起こらない仕組み」を考えて、業務に取り組むだけで減らせる失敗はたくさんあります。

ただ、失敗した人自身が「仕組みが悪かったんだな。自分が失敗したのは仕方なかったな」と考えるのも、また違いますね。失敗しやすい状況に気づいて、事前に仕組みの変更を提案できたかなど、失敗したことはきちんと反省し、次に活かすキッカケにしたいものです。

そして第二の理由は、失敗や問題、ミスの共有は組織の成長にとって、非常に有益なことであるからです。失敗の共有をすることで、その他のメンバーも、どういう点に気をつければいいのか気づくことができます。同じ業務をするときに同じ失敗をすることはなくなるでしょうし、他の業務に応用することで、どんどん業務レベルの質が上がっていきます。

失敗した人を責めるのは逆効果、隠ぺいに繋がる可能性があります。もし部下や後輩やチームメンバーが失敗をしたときには、一緒に問題解決、つまり仕組みづくりをしていこうとする姿勢が大切です。また、仕組みは整っているのに、本人の集中力が足りずに失敗してしまうこともあるかもしれません。集中せず仕事をして失敗している姿を見ると、つい責めたくなってしまうものですが、仕事に対する不満があったり、周りに言えない悩みを抱えている場合もあります。また、仕組みが整っていると思っていても、失敗した人の話を聞いてみたら、仕組み自体に欠陥があることに気づくというのもよくある話です。ですので、誰かが失敗したときには、まずは責めずに話を聞いてあげられるとよいですね。このように一緒に失敗に対応する姿を見せることで、本人の反省に繋がりますし、そのことで会社やあなた自身に対する信頼感が生まれ、次回、別の失敗をしたときに、積極的に報告しようと思うようになっていくはずです。



スタートアップは挑戦なしには、大きな成長を望めません。失敗を恐れて挑戦をしないということは、事業や個人の成長を止めることと同義なのですね。Tokyo Otaku Modeでは、積極的に失敗し、大きな成功をつかみたいという熱い情熱を持ったメンバーを募集しています。もし僕やTokyo Otaku Modeに興味があったら、一度お話ししませんか?お気軽に h_ataka[a]tokyootakumode.com までプロフィールを送ってください。Wantedlyでも募集しています。

 

スタートアップで働く人に伝えたいスピーディーに仕事を進めるための10のマインド

Tokyo Otaku Mode(以下、TOM)の安宅です。スタートアップはドッグイヤーならぬマウスイヤーとも言われ、周囲を取り巻く環境がまたたく間に変化していく世界です。小規模なスタートアップが大企業やライバル企業に勝つためにもっとも重要なことは、メンバーひとりひとりがあらゆる業務をスピーディーに行うというマインドを持つことだと思います。

ヒト・モノ・カネのないスタートアップが持てる唯一の武器がスピードです。関わるメンバーのひとりひとりがスピードを重視し、「素早く施策を進め、行動する」ことが成功へのカギだと思います。

このエントリーは、これまで僕がスタートアップの立ち上げで経験したことを元に、自分の業務スピードだけでなく、チームや会社全体のスピードを上げるために、どんなことを意識して業務に臨めばよいか、考えをまとめています。自分の業務スピードだけでなく、チームや会社全体のスピードを上げるためには、自分がどう動くべきか/どう考えるべきかが、今回伝えたいことのおおまかな話です。気合を入れて書いた分、長文になりましたが、よろしければ参考にしてください。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加



1. ボールの持ち時間を減らす

対面・メール・チャットなど、仕事上のあらゆるやり取りにおいて「即時回答・即時返信」は、スタートアップで働く上で心がけたいことのひとつです。以前のエントリーでも書きましたが、仕事やプロジェクトはタスクベースで進んでいくので、自分の回答や返信が遅れると、相手の業務をストップさせてしまう、という感覚を持つことはとても大事です。

プロジェクト全体がスピーディーに動いているかどうかを常に意識し、自分にとって優先度が低くても、相手にとって優先度が高いものであれば、自分のタスクよりも優先させて、プロジェクト全体がスムーズに進行するようにしたいものです。例えば、退社時間の前に、自分宛のメールをひと通り返信して、自分持ちのボールがない状態にしておけば、そのあと残って作業を続ける人がひとつタスクを前に進めることができます。

少人数のスタートアップでは、メンバー全員が常に膨大な業務量をかかえています。広報や総務など、バックオフィス業務に個別の担当がいるわけでもなく、プレスリリースを書いたり、オフィスの清掃、消耗品の発注まで、あらゆることを創業者含めメンバー全員で分担して行うことになります。本業以外の業務で時間をとられ、本当にやるべきことが疎かになってしまっては元も子もないので、あらゆるタスクに関わるボールを素早く正確にさばいていくことが非常に重要です。



2.ボールの待ち時間を減らす

相手にパスするスピードを速くするだけでなく、相手から速くパスしてもらう、つまり、自分の「待ち」の時間を短縮するために工夫できることはたくさんあります。

例えば、誰かに相談するときに、「どうしたらいいですか?」という丸投げ型の質問をせず、「自分はこう思うけれど、この進め方でいいですか?」と聞くことで、イエスかノーでパッと答えてもらえるようになります。何かを決めてもらいたい場合は、選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを伝えると、相手は選択肢の中から選ぶだけで済むので、相手が情報をそろえて考える時間(=自分の待ち時間)を減らすことができるのです。どういう風にパスをすれば、その後にスムーズな展開になるのかを予測して、相手にとって理想的なパスを繰り出せるといいですね。

また、普段のメールのやり取りで、いつも返信が遅いと分かっている人に、早めにリマインドを送る/口頭で確認するといった動きは、口で言うのは簡単ですが、毎回きっちりと行うことは意外と難しかったりします。いま、そのタスクのボールは誰が持っていて、自分はそのタスクの中でどのタイミングでボールを掴むのか、といった全体像を把握しながら動く必要があるからです。ちくいち確認するのは骨が折れますが、こういう小さな行動の積み重ねが、後々に大きな差を生むのです。



3.素早くタスクを進める方法を共有する

ある人がスピードを意識して作業して、素早く仕事を終えたとしましょう。しかし、別の人が同じ業務をやった時、役に立つ情報や、スマートなやり方を知らないばかりに、もっと長い時間がかかってしまうケースは多々あります。

情報ややり方やを知らない人に対しては、素早く行う方法を教えてあげることが大事です。今まで半日かけて作成していたデータ集計が、Excelの関数ひとつでわずか10分になるなんてことは、本当によくあります。エンジニアがシステムを開発しなくても、やり方を知っていれば生産性を上げる機会はたくさんあります。社内の部下や後輩などが相手の場合には、一度自分がやってみせて、やり方を教えてあげるのもよいですね。知っていればスピードを上げられる経験や知識については、どんどん共有していく雰囲気や文化を育みたいものです。



4.「なる早」は禁句

誰かに仕事を依頼するときに、「なる早でお願いします。」は、つい使ってしまいがちなフレーズです。

しかし、相手によって「なる早」の優先度がまちまちだったり、いつボールが返ってくるかわからず、逆にスケジューリングしづらくなるという点で、じつは魔性のフレーズだと考えています。仕事を依頼するときは、きっちり期限の設定をしましょう。少なくとも、「●月●日までにできますか?」と聞けるとよいですね。

また、上司が部下に対して、「なる早」を使っている場合、部下の業務量を把握できていないケースが多いので、黄色信号のフレーズとも言えます。他に持っている業務とその進捗度合いを把握したうえで、「先にこの仕事に取り掛かり、●日までに仕上げてほしい。」とか「急ぎではないので、他の仕事の合間にやってもらって来週金曜までに提出するように。」などと、具体的に伝えるようにしたいものです。

 

 

5.信頼関係がコミュニケーションを加速させる

社内外の関係者と信頼関係を築くことは、スピーディーに仕事を進めるうえで、本当に大事なことだと思います。親密な関係を築ければ、コミュニケーションにかかる時間は、どんどん減っていきます。一言で言うと、「あうんの呼吸」の関係ですね。

例えば、一般的にメールの冒頭には、「お世話になっております、TOM安宅です。」、文末に「よろしくお願いいたします。」と入れる慣例がありますが、親密な関係であれば、その2つは取り除くことができると思います。これだけで、書く手間と、読み/読ませる手間を省略できます。1通のメールでの時間短縮は、2人合わせても1分くらいかもしれませんが、これが毎回となるとチリツモで、年間を通じれば大きな差になります。もちろん、いくら時間短縮になるからといって、信頼関係ができあがってないタイミングで行うと、逆に信頼を失いかねないので、相手によって使い分けましょう。

メールの定型文はほんの一例ですが、他にもあらゆるコミュニケーションにおいて、”信頼関係に応じたコミュニケーションの省略”を心がけることで、かなりの時間を節約できるでしょう。ただし、信頼関係を過信してギリギリを攻めすぎて、信頼関係が崩れるなんてことのないようにバランスは大事です。

対面したときにしっかり意思疎通ができ、目的やゴールの共通認識ができていれば、実際にタスクを進める際のやり取りをどんどん簡素化していくことができます。仕事ではコミュニケーションが大事とよく言いますが、お互いの信頼関係の元、最低限の連絡でコミュニケーションが成り立っているのは、良い兆候です。

逆に、業務に対して疑問を持っている相手や、目的・ゴールの認識にずれがある相手とのやり取りというのは、非常に時間がかかるものです。仕事を始める前に、目的やゴールの確認、考えの統一や言葉の定義のすり合わせをしたり、終わったあともアフターケアをしたりと、信頼関係がない分、コミュニケーションにさかれる時間が増えることになります。そう考えると、じつは仕事を始める前までに、相手とどれくらい信頼関係を作っておけるかが、業務全体のスピードを引き出すためには重要であることが分かると思います。

これは社内のやり取りでも言えることです。会社のビジョン・ミッションや価値観が浸透していない新しいメンバーは、たとえやる気があっても認識のずれや、アウトプットに齟齬が生まれがちなので、考え方を一致させ、しっかり信頼関係を築くことが大切です。



6.経験をたくさんする・情報をたくさん得る

仕事を進めていくと、さまざまな問題に直面すると思います。その際に、同じような経験をどれだけしてきたか、情報をどれだけ知っているかによって、問題解決のスピードが大きく変わります。パターン認識と言い換えてもいいでしょう。

過去に失敗した経験がある人は、次にどこに気を付ければよいか、どう工夫すれば目の前の問題を解決できるかにいち早く気付け、スムーズに仕事を進められるようになります。

また、この業務にはあのツールを使えば早そうだとか、以前こういうツールがあったから、探せばこういうツールがありそうだとか、自分の培ってきた経験や持っている情報から、発展的に思いつけるような感覚を持てるようになると、ますます仕事を素早くこなせるようになると思います。

ここでいう「情報」には、本やニュース記事などから得られる外部情報だけでなく、社内メンバーのリソースや体調など、可視化されない内部情報も含まれます。また、メンバーのタスクがどこまで進んでいるかという「進捗」も重要な情報です。各メンバーの進捗情報を把握できていれば、予定と比べて順調なのか分かりますし、予定より遅れていたら、アドバイスやサポートができます。しかし、もし「情報」を知らなければ、次のアクションに繋げることができないわけで、このことからも「情報」の重要度が分かると思います。



7.経験や情報を整理しておき素早く引き出す

自分の経験や情報をもとに、さまざまな局面で素早く判断できるようになると、仕事のスピードは上がっていきます。しかし、たくさん経験や情報を持っていても、うまく活用できなければ宝の持ち腐れです。そのために大切なことは、経験の記憶や情報を、「正確かつ最新の状態で残しておくこと」だと思います。あのときにこう判断したから、今回も同じ対応をしたいと考えた場合でも、記憶があいまいだったり、それが前々回の対応の記憶で、前回の対応のことは忘れていたり、実は前回の対応は自分の知らないところで他の人がしていた場合、正しい判断ができなくなってしまいます。

「記憶」をPCのメモリ、「記録」を外部のハードディスクと捉えると分かりやすいと思います。何か情報を参照するときに、メモリ内にあるデータ、すなわち自分の記憶にあれば、瞬時に情報を引き出すことができます。覚えておける内容のものであれば、正しく記憶し、その記憶をもとに判断をするのが一番スピーディーに判断できる方法です。

しかしメモリの容量、つまり人の記憶できる容量には限りがあります。そんなときは、外部のハードディスクに情報を参照しにいきます。それが記録です。記録することには時間がかかりますが、正しく記憶する自信がない場合や、他の人へ共有する可能性があることは、記録を残しておくと、あとで有益な情報となります。

僕の場合は、記録はGmailに集め整理しています。自分宛に、経験や情報に関するTIPSやチート集を、後から自分が検索するであろうキーワードと一緒に送っておけば、必要なときにすぐに情報を引き出すことができ、スピーディーな判断ができるようになります。



8.勇気を持って決断する

「過去にこう対応したから、今回もこうしよう」という判断は、スピーディーに仕事を進めるうえで、有効な手です。しかし、実際には、前回の事例をそのまま活かせることは、それほど多くないということが分かります。また、算数のようには正解/不正解がはっきりしていないことはよくあります。そんなとき、どう判断すればよいか迷ってしまいがちですが、スタートアップにおける最悪の選択肢は「保留」です。このやり方で本当に正しいのか不安になることもあるかもしれませんが、それでも保留しては、前に進んでいきません。それが後からみたら失敗の決断だったとしても、”選ばないといけない”のです。

スタートアップでは手探り状態の中、そうした大事な決断を瞬時に行っていく決断力、意志力の強さが試される場面が非常に多いです。僕らは、英語もできないのに500startupsというシリコンバレーのベンチャー育成機関に行くことを、数週間で決断しました。エアチケットも滞在する家も旅立つメンバーも決まってない中、メンバーによっては、仕事を退職したり、嫁・子供を説得したりと、世間的に考えると難しい選択を迫られていたと思います。

どんなシーンでも、何かを決断するということはなかなか難しいものですが、情報をいくらそろえても、最終的にはやってみないと分からないというのが現実です。失敗しようが、勇気を持って決断することがスタートアップの宿命です。たとえ、その選択した道がイバラの道だったとしても引き返せません。普通なら失敗するようなことでも、成功させてしまう勢いで取り組めばいい、と”思い込む”というのが正直なところかもしれません。

僕らが500startupsに行く決断をしたとき、シリコンバレーに行ってやり遂げれば、TOMを取り巻く世界が変わると信じ、どんな困難が待ち受けていても、大きなチャンスだと感じました。爆発的な成長を目指し、日々取り組んでいる中で、ビッグチャンスが目の前を通った時、みすみす見逃すことはできなかったのです。リスクが高くても、実現が困難だったとしても、成功した時のリターン(=事業の成功や会社の成長)が大きければ突き進む、という考えで突き進んだのです。



9.自分なりの評価軸を持つ

スピーディーな決断をするうえで有効なのが、自分なりの評価軸を持つことです。あるデザインについて「GO」を出すかどうかを判断する場合、「自分はセンスあるから大丈夫!」と信じて、自分の直感で判断するのもよいでしょう。その自信がない場合には、上司に確認するでも、センスのある●●さんに常に確認するでも、チーム内で多数決を取るでもOKです。特に、デザインなど絶対的な正解がない業務では、迷っていたらいつまでたっても先に進まないので、このときにはこういう対応をしようと自分で決めておくことが大切です。この評価軸は、経験を積んでいく中で洗練されていくと思いますので、そのときの自分が考えたベストなものであれば問題ありません。

ちなみに僕は、何らかの判断が必要なとき、「これを進めると、成長スピードが上がるか、目標に近づいているか」を概念的に捉え、「100点中80点くらいだな」などと点数化して判断するようにしています。評価軸の持ち方に迷ったときには参考にしてみてください。



10.常に最高のクオリティは必要ない

スタートアップでは、創業期や成長期など、そのときの状況やステージによって、求められるクオリティはめまぐるしく変化していきます。今、どういうクオリティが求められているかきっちり把握して、その都度、費用対効果を判断し、その状況(ステージ)に応じたベストなアウトプットを出すことは非常に重要です。

例えば、デザインや文章には正解がなく、いくらでもブラッシュアップできるので、なかなか自分で納得がいかず、時間をかけすぎてしまうことがあるかと思います。しかし、ことスタートアップにおいては、デザインや文章に限らず、業務すべてにおいて、1週間かけて100点を取るよりも、3時間で70点を取ることをおすすめします。ようやく100点に近づいたと思ったところで提出して、方向性が違っていたら、今までの時間は無駄になってしまいますし、そもそもアウトプットがなかったその1週間が機会損失になっている可能性も高いのです。できるだけ早く50点と思うところまで完成させて、その時点で方向性を確認してもらい、ずれていないと分かったら、そこから詳細の作りこみを始めるほうが90点までの道のりは早く進むはずです。

 

ここで挙げた例のひとつひとつは些細なことかもしれません。でも、それをスタートアップに関わるメンバー全員で実行すれば、相乗効果で事業の成長スピードはどんどん加速していくはずです。Tokyo Otaku Modeでは、自分も会社も神速で成長させたいという情熱を持ったメンバーを募集しています。もし僕やTokyo Otaku Modeに興味があったら、一度お話ししませんか?お気軽に h_ataka[a]tokyootakumode.com までプロフィールを送ってください。Wantedlyでも募集しています。