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芸人の世界とスタートアップ、15の共通点と成功法則

僕はこれまで何度かWebサービスを行うスタートアップでSNSやメディアの立ち上げに携わってきました。個人的にもWebサービスを企画してサイトをいくつか運営してきました。

しばらく前から、スタートアップの世界は芸人の世界ととても良く似ていると考えていて、今回はその共通点を書きだしてみたいと思います。芸人の世界で成功をつかむ人はどんな人で、どんな風にして成功を収めたのかという視点で見ていくと、スタートアップの世界での成功のヒントがたくさんつまっていると思います。他の業界だからこそ、自分の業界を客観視でき、自分が芸人でいうとどのポジションにいるのか、もしその芸人だったら、どんな風に成功をつかむのか、といったことを考えると、また別の角度から見えてくるものがあります。

前置きが長くなりました。まずは僕が考える共通点を書きだしてみました。

 

 

 

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1. 少人数からスタートする

芸人を目指そうとしている人は、1人でソロ芸人を目指したり、2人で漫才コンビを組んだりします。スタートアップの世界も1人〜3人くらいの少人数で始めることが多いです。人数が少ないので、やれることは少ないですが、少数精鋭で進めることで、大手が手を出せないニッチジャンルを開拓できるのです。

ただ、スタートアップの場合、いつまでも少人数で進めるケースはレアだと思います。よりスピーディーに成長するために途中から役割に応じて人を雇っていきます。芸人の世界でも大人数になっていくパターンもあります。成功者のまわりにブレーンや取り巻きがたくさんいて、一種のチームになっていきます。

 

2. メンバーの役割が明確

芸人の世界ではボケとツッコミというメンバーの役割が非常に明確で、それぞれに専門性があります。成功した芸人の多くは、この役割が明確で、お互いがお互いを補完する関係になっています。スタートアップでも、開発、デザイナー、営業などで役割が明確に分かれるといいチームになります。

 

3. 成功したときのリターンが大きい

芸人の場合、テレビやラジオなどで知名度を上げていき、出演料という形で報酬を受け取ります。大成功を収めれば、TV出演で1本ン十万からン百万円の仕事がわんさか、という状態にも。スタートアップの場合は、成功はマネタイズに成功し、事業が回り出すというのがひとつの分岐点。また、上場かバイアウトのタイミングで大金が手に入る場合があります。

 

4. 元手がほぼいらない

芸人を目指す若者は多くいます。そのひとつの理由に、元手がほとんどいらないことがあげられると思います。芸人で必要な初期投資はあっても衣装くらいでしょうか。スタートアップの場合は、パソコンと通信費とサーバー代やソフト代くらいですね。両者とも、資金がない学生でも気軽に参加できるくらい、初期投資は必要としません。七光りでもないかぎり、出自もほぼ関係がないのも共通点です。

資格も不要なので、明日から「芸人」と名乗れば誰でも芸人になれてしまいます。スタートアップの場合は、プロダクトを作るか、会社を作れば、とりあえずスタートアップと名乗れるでしょう。 逆に言うと、参入障壁がほとんどなく、後から後からライバルが出現してくるということでもあります。人気の芸人になったとしても、時代の流れに乗っかっていく努力を怠らないこと、それはスタートアップの世界でも同様です。

 

5. 数字で評価される

芸人の人気や実力を推し量るひとつの指標が、劇場に来てくれるファンの人数、公演チケットが何枚売れたかという数字。テレビ番組の出演時には視聴率も大事な指標になるでしょう。スタートアップの場合も、サイトやアプリのアクティブユーザー数やページビュー数など、数字でプロダクトの評価を行えます。数字であらわれる分シビアではありますが、明確な指標をKPIに設定しやすいという利点もあります。

 

6. ゆるやかなネットワーク

芸人やスタッフの仲の良さで番組の出演者が決まっているケースがままあります。スタートアップでも、創業メンバーを中心に、ゆるやかな横のつながりがあって、情報共有やお互いにサポートをしたりしています。

 

7. 同期がライバルであり仲間

芸人の世界では同時期にデビューした世代の話がよく話題にのぼりますが、スタートアップでもやはり似たような同期のつながりがあったりします。特に似たような芸風の場合は、比較されライバルになってしまうことがあります。スタートアップの場合はテーマやサービスがかぶっていたりすると、ユーザーの奪い合いになります。

 

8. クリエイティブな能力が必要

芸人が作り出す漫才やコントはとてもクリエイティブなものです。スタートアップが生み出すアプリやWebサービスなどのプロダクトもまったく一緒だと思います。芸人だと「コンビニネタ」「ファストフード店ネタ」など、同じテーマの漫才やコントがありますが、そのアウトプットの形は芸風などによって、まさに十人十色。スタートアップの世界でも、同じテーマでも、デザインやUI、機能が全く違ってくるWebサービスやアプリを見ていると、クリエイティブな能力やスキルが必須なのだと感じます。

 

9. プロダクトを磨き続ける

漫才やコントは一度つくって完成ではなくて、劇場や公演、テレビ番組などを通じて少しずつブラッシュアップされていきます。同じネタでも、少しだけ言い回しや展開を変えたりすることはよく見かけます。M-1などのような本命の舞台に向けて、どちらがウケたかを調べることもあるといいます。スタートアップの世界で考えてみると、WebサイトのランディングページでA/Bテストを行っているようなものでしょう。どちらも細かい施行を繰り返し、プロダクトを磨き続けていくのです。

 

10. 売り出し方

芸人の世界では、インスタントな笑いでライトファンを掴み、本来やりたい芸風を後から出していく、というような戦略で売りだしていくケースをよく見ます。スタートアップでも、サテライトサイトを作って、本サイトに誘導する、といった戦略をとることがありますが、いったんターゲットとなるファンをプールしておくという視点で見ると、共通していると思います。

 

11. 体が資本

芸人が病気になると仕事ができないので、体調管理は非常に大事です。スタートアップでも創業メンバーの誰かが倒れたりしたら、その瞬間事業が終わる可能性が高いので、健康第一なのは間違いありません。

 

12. 人気が集中する

視聴率が取れる売れっ子芸人になると、テレビ番組から引っ張りだこになり、毎日のように出演するようになります。芸人は星の数ほどいるのに、そうした一部の芸人だけが人気者になるピラミッド構造になっています。スタートアップもまさにそんな形になっています。人気が高ければ高いほど、タイアップや他社とのコラボレーションがしやすくなり、よりユーザーを引き寄せることができます。

 

13. 養成所がある

芸人の世界で養成所といえば、吉本のNSCでしょう。芸人の卵から一人前の芸人に訓練をする場所です。スタートアップの世界にも、シードアクセラレーターという起業家をサポートする存在があります。こうしたサポートを受けることで、プロダクトの完成度が高まったり、資金調達がスムーズになったりして、成功率を高めることができます。ちなみに、僕らの会社、TokyoOtakuModeも500 Startupsというアメリカで勢いがあるシードアクセラレーターに入ってサポートを受けています。

 

14. 登竜門がある

THE MANZAIやM-1、R-1などコンテストで目立つことで、無名な芸人から一気にメジャーにのし上がる道があります。スタートアップの世界でも、各ベンチャーキャピタルなどが主催しているイベントがあるので、ここで投資家からの評価を勝ち取れば、資金調達の面で有利に働く可能性が高いです。

 

15. 師匠(メンター)が存在する

芸人の世界は師弟関係がはっきりしています。成功した人のもとで学ぶことで、芸人としての成功率を高めるのです。スタートアップの世界でも、メンターやアドバイザーのアドバイスをもらいながら、成功のアイディアをもらったり、陥りがちな失敗を避けたりして、成功率を高めていきます。

 

 

ダウンタウンが東京進出を目前に、当時すでに東京で成功を収めていた島田紳助からいくつかのアドバイスを受けています。

紳助流「東京で成功する方法」と銘打たれた番組の島田紳助の発言を抜き出してみました。

 

  • 「矢面にたったらあかん、スリップストリームでウッチャンナンチャンの後ろについていけ。俺はさんまのスリップストリームでここまできた」
  • 「大阪人は言葉のハンデがあるから、ベタベタな大阪弁は東京人が通じる大阪弁になおせ」
  • 「番組スタッフや出演者に気に入られること」
  • 「ビビらんとぶつかっていけ」
  • 「マンションを借りないといかん。ホテル住まいだとなめられる。ヤクザでも進出するときは組事務所を作る」
  • 「俺のマンションに有名人くるから遊びに来ること。そこで友だちをいっぱいつくれば、友だちとして仕事できる関係になれる」
  • 「東京での親を見つける」

 

このうち、ダウンタウンがどれくらい実践したかは定かではないですが、とくに「ビビらないでぶつかっていく」姿勢は、アドバイス通りにしていたように思います。無名のスタートアップでも、そのまま当てはめられるようなものがたくさんあると思います。

まったく別々の世界であるのに、共通点がたくさんあるということは、芸人の世界で成功を収めている人たちが、いかにして成功を掴んでいったのか、デビュー当時からどんな軌跡を残していったのかを学ぶことで、スタートアップで成功するためのちょっとしたヒントになるんじゃないかと思います。

ビートたけし、明石家さんま、島田紳助、ダウンタウンなど、成功を収め大物芸人となった彼らのデビュー当時の映像をひたすら見て分かったことは、彼らはデビュー当時から成功するための心構えや戦略をしっかり持っていたことでした。芸人の世界は才能に支えられている部分も大きいですが、だからといって無策ではなかったのでした。スタートアップの世界でも参考になることがとても多いと思います。

当時、大阪では超人気者となったダウンタウンでしたが、全国的にはまだ無名の状態でした。ダウンタウンでも、テレビで目立つために、初出演の笑っていいともでいきなりタモリをはたいたり、徹子の部屋で「てつこちゃーん」とタメ口で話したりを戦略的に行っていたといいます。普通の若手芸人ではできないであろうことを堂々と行っていました。特に、浜ちゃんはその意識を強く持っていたと、後に志村けんとの対談などで語っています。成功を掴みたいという強い意志を感じます。松ちゃんという圧倒的な才能を持ち合わせていたとはいえ、こうした最初の戦略により「ただ者じゃない奴らが来た」「しかも面白い」という業界内の評判を生み出したのです。

スタートアップでも、勢いや突破力があるチームは、創業者たちの熱い思いや志がつまっていて、かつ、ちゃんと戦略的に成功のストーリーを描いているように感じます。

 

 

募集しています

芸人とスタートアップの世界では、これだけの共通点がありますが、海外進出という点では、芸人が世界に通用したケースというのはこれまでほぼ皆無といっていい状況です。やはり文化と言語の壁は大きいのだと思います。

僕がいま携わっているスタートアップ「Tokyo Otaku Mode」は、日本のアニメ/漫画/ゲームなどのオタク文化を世界に発信するメディアです。(詳しくは日経の記事をご覧ください)僕らは日本が世界に通用する数少ないもののひとつが、こうしたオリジナルの文化であると考えていて、作品を生み出すクリエイターを全力でサポートしたいと考えています。先行き不安で、未来が見えない日本において、いま日本が世界に誇れるものは、こうしたオタク文化だと強く思います。10年、20年後の日本を想像すると、世界に通用する文化を支えるTokyoOtakuModeは僕らの次の世代に意味ある活動になるんじゃないかと思ってたりします。

学生や社会人の方でも、もし僕やTokyoOtakuModeに興味があったら、あるいは起業やWebサービスの立ち上げに興味があったら、一度お話ししませんか?エンジニア、デザイナー、ライター、編集者、営業など、幅広く人を募集しています。 hajimeataka[a]gmail.com までプロフィールを送ってください。