最近は昔にくらべてWebサービスやアプリ開発が簡単になってきたということもあり、本格的なエンジニアでない人でも、アイディアとヤル気さえあれば、個人や少人数でもWebサービスやアプリを生み出すことができるようになってきました。学生でも起業して会社を立ちあげたり、社会人でも仕事が終わった平日の夜や休日に自分のアイディアを形にしようと精力的に活動している人も増えています。僕もブログを書くようになってから、そうした人たちから連絡が来たりして、相談に乗ったり、一緒に何かを作ったりと面白い取り組みをしてきています。(そんなひとつのプロジェクトがTokyo Otaku Modeだったりします。)
誰でもWebサービスやアプリが作れるのが当たり前になってきたということは、資本力や技術力で大きな差は生まれづらいことを意味しています。例えば、サーバーの負荷分散の仕組みも、AWSのようなサービスを使えば、それほど大変ではなくなっています。技術面では、ページ表示や読み込みなどのレスポンスの高速化だったり、いかに早くシステム実装できるか、という点でスキルの差がでるかもしれませんが、今後、差別化ポイントはどんどん少なくなっていくと思います。一方で、デザインやUI/UXは、自由度が高く、センスによるばらつきが大きいところなので、差別化ができていたポイントだったと思います。
例えば、TokyoOtakuModeでは、クリエイターさんたちのページデザインを、海外向けのポートフォリオサイトとして使えるように、こんな形のページにしています。
ただ、最近はデザインでも全体のクオリティが上がってきており、セオリーやフォーマットが決まっているので、大きな差別化ポイントになりづらくなっている気がします。そんな状況の中、次の差別化ポイントはなにか、ということを常々考えています。
僕はそのひとつの答えが、「人力によるサポート」だと思っています。
例えば、Tokyo Otaku Modeのメニューのひとつに「Gallery」という画像投稿サービスがあります。このメニューには画像検索をする際に便利なタグ機能があります。イラストであれば、「#Illustration」、コスプレであれば「#Cosplay」と、画像にキーワードを設定するアレです。実は、このタグの生成と設定は、すべて僕らの手で行なっていたりします。タグ生成や設定はユーザーが行えるようにもできますが、わざわざ手間暇をかけて、自分たちでやっている理由は、どんなタグを作って、どの画像にどんなタグをつけるか、というクオリティコントロールがしやすくなるからです。ユーザーさんにすべて任せると、タグのキーワードにゆらぎが生じたり、間違って関係ない画像にタグを付けてしまう、といったことが確実に起こります。そうなると、検索結果ページのクオリティが落ちて、使えない機能になってしまうかもしれません。
同じ理由で、Tokyo Otaku Modeのトップページに掲載される画像は、僕らが1枚1枚画像を選別して、一定の間隔で手作業で公開していっています。Webサービスやアプリのトップページは、雑誌で言えば「表紙」に当たる部分で、ここのイメージがサービス全体の印象を決めるくらい大事です。ユーザー投稿型のサイトで、トップページに意図しないユーザーさんの投稿画像が出てしまうことはよくありますが、どんなテキストや画像が投稿されるか制限できない場合、サイトに訪れるユーザーさんに悪い印象を与えてしまうことになります。Tokyo Otaku Modeでは、こうした意図しない投稿画像が上がらないように、手間を惜しまないようにしています。
また、Tokyo Otaku Modeではクリエイターの海外進出をテーマに、さまざまなサポートを行なっています。上記のポートフォリオページもその一環ですが、プロフィールや作品タイトル、説明文の翻訳も無償サポートしていたりします。
もうひとつの差別化ポイントは、ユーザーさんとの「エンゲージ」だと思います。
単なるサイトの運営者と訪問者の関係を超える、強い関係を生み出すこと、これが今後のWebサービスやアプリにもっとも大事なことになると思います。なんでもシステムで解決しようという発想だと、どうしてもユーザーさんとの直接のやり取りを最小化して、費用対効果を最大化したり、効率化をはかる方向に機能や仕組みを作りがちです。しかし、同じようなWebサービスやアプリがたくさんあったり、今は存在しなくてもすぐに競合が現れてくるという前提にたってみると、そうした考えはこれから通用しなくなってくるのではないかと思います。
人間は感情で動くので、似たようなサービスがあった時に、どちらを選択するかは、そのサービスが「好き」だったり、どちらとの関係が深いかで決まります。エンゲージが強ければ、複数のサービスがあったときに、そのサービスを選ぶ理由に繋がります。
Webサービスやアプリは、普通に運営していると、顔の見えないコミュニケーションになりがちですが、いったん顔が見える関係になると、単なるユーザーさんと運営者の関係を超えた非常に強い繋がりになります。Tokyo Otaku Modeでも、リアルイベントを開いたり、ユーザーと直のコミュニケーションを取って、こうした関係をひとつずつ築いています。それ単体の費用対効果だけで見てしまうと、おそらく真っ赤かだと思いますが、こうした手間暇を惜しまないことが、ユーザーさんとの信頼関係に繋がっていきます。直接ユーザーさんと繋がることで、サービスの使い勝手や新しい機能についてフィードバックも素早く得られます。そうした対話を繰り返している中で、解決すべき問題も見えてきて、スタートアップが進むべき方向性を示してくれることもあります。
メンバー募集しています
実は2年前の昨日3月24日は、Tokyo Otaku ModeのFacebookページが立ち上がった日です。2年前の3月といえば、東日本大震災が起こった3.11がまっさきに思い出されます。Tokyo Otaku Modeというサービス名称は2月3日に決まっていたので、ロゴのデザインを作ったり、サービスの内容を詰めたり、Facebookページを立ち上げる準備の最中に、あの地震が起こったのでした。
あの地震で僕の身の回りでもいろいろなことが変わって、人生観も大きく変わりました。この時代に生まれて、自分はなにをするのか。そんな自問自答をしながら日々過ごしています。今後の日本を考えると、少子高齢化の問題や、これまで世界に通用していた製造業が後退するなど、あまり明るい未来を描けないことのほうが多いですが、それでも日本には世界に誇れる凄い文化がたくさんあります。僕が携わっているTokyoOtakuModeは、日本のアニメ/漫画/ゲームなどのオタク文化を世界に発信するメディアです(詳しくは日経の記事をご覧ください)。2013年3月現在、Tokyo Otaku ModeはFacebookページに1,100万人のファンを抱えたメディアに成長しました。PC向けのTokyo Otaku Mode.comをリースしたり、スマートフォン向けのオタクカメラは世界各国で1位を取り、250万ダウンロードを達成していますが、まだまだこれからのサービスで、メンバーを募集しています。もし僕やTokyo Otaku Modeに興味があったら、一度お話ししませんか?お気軽に h_ataka[a]tokyootakumode.com までプロフィールを送ってください。