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「稼ぐヤツが偉い」から「社会を良くするヤツが偉くて稼げる」へ。トークンエコノミーが社会にもたらす10の可能性

ブロックチェーンの有力な活用方法のひとつとして期待される「トークンエコノミー」について、先日、国内外の企業と有識者が集まるイベント『b.tokyo』で登壇の機会をいただき、パネルディスカッションに参加してきました。

 

パネルで話しているうちに、色々とあれもこれも考えが出てきてしまって、話尽くせなかったこともあり、せっかくなので頭の整理も兼ねて、記憶が新しいうちに書き出してみようと思います。


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トークンエコノミーが社会にもたらす10の可能性

 

インターネットで情報の移転がなめらかになったのと同じように、ブロックチェーンによって価値の移転もなめらかになっていくという前提に立つと、トークンエコノミーとは、『インターネット上に価値が紐付いた経済圏ができあがる』ということだと思います。

 

トークンエコノミーのモデルとしては、身近な例でいうと商店街がわかりやすいかもしれません。商店街で魚屋さん、お米屋さん、洋服屋さんといったお店ごとに人々に必要なサービスを提供して、魚屋さんは魚を売ったお金でお米や洋服を手に入れられる、そこで支払われたお金でお米屋さんは魚を買うことができる、といった人々の活動を通して、経済の循環が行われていくイメージです。

 

これまでそうした経済圏をインターネットを介して作り出すことは価値の移転をセットにするとさまざまなボトルネックがあり難しかったのですが、ブロックチェーンが広まるにつれ、そうしたボトルネックが解消され、徐々にトークンエコノミーの成功事例が出てきています。

 

トークンエコノミーが社会にもたらす可能性の中で、特に重要と思われることを列挙してみます。

 

  1. 事業やサービスをはじめる時に必須となる「資金調達」の領域に革命が起こり、トークンを通じて世界中の人々から資金調達が気軽にできるようになる、ICO・IEO・STO、さらにNFT(Non Fungible Token)を用いてクラウドセールを行う新しい調達方法も出てきている。いわばトークンエコノミーの発祥の地となるエリア。革命的であるがゆえさまざな課題が噴出したため、法整備などの対応が進んできている状況

  2. 参画するプレイヤーへのインセンティブ設計によって、例えば、大企業の肩に乗って事業を一気にスケールさせたり、これまでにないような熱量を持ったファンコミュニティの創造が可能となる。パートナーとの強力な共創関係をつくり出すことで、資金力やリソースのないスタートアップでも爆発的な成長を生み出し、これまでの常識では考えられなかったスピードでユニコーン以上の成功をつかむ企業が出てきている。実際にイーサリアムは4年で2兆円規模の時価総額を実現してしまった

  3. トークンを用いてストックオプションのような報酬設計が容易に行える。コミュニティやサービスの成功を参加者全体に還元でき、それにより、コミュニティを自発的に盛り上げる個人や、事業上シナジーがある会社を営業したり、自主的にイベントを開催するといった、熱狂的な活動が生まれる。SNSが発達した現代において、もっともマーケティングチャネルとしてエンゲージの強いファン主体の口コミを(サービス主体視点で)コスト負担なしで誘引できる。そもそもが参加する全員がファンであり、ステークスホルダーという、消費者と提供者という枠組みが融合したファンと企業の新しい関わり合いに発展させられる

  4. ビットコインのように、『運営』が存在しない(=中央がいない)サービスを実現できる。コミュニティにいるファンや企業など、関わるみんなで日々の運営を行い、サービスの維持・発展を推し進めていくことができる。例えば、フリマアプリを運営する時に必要な「運用」「開発」などを利用者自身に行ってもらうことで、『運営』が存在せず、余計な手数料を抜かれたり、コミュニティの意思が尊重されるような方針になりやすいなど、これまでになかったサービスの発展に繋がる。法人の垣根がとけていき、ひいては人々の働き方がより柔軟かつなめらかになる

  5. クラウドファンディングの仕組みがアップデートされる。これまでのクラウドファンディングがリワードの「消費」だとしたら、支援が投資になるようにリワードに「資産性」を帯びさせることができる

  6. みんながストックオプションのようなトークンの所有者となることで、参加者のコミットが高まり、コミュニティの意思が尊重されるようになる。そうすると、金銭的価値を生み出す活動だけでなく、人々に共感を与えるより本質的な活動ができるキッカケになる。これまでなら金銭的リターンがなく、企業や個人として取り組めなかった活動でも、そのコミニュティが是と認められるなら、そこに経済的価値が紐づくため、より人々のための活動が評価され、その活動によって生活ができるようになる

  7. 所属したい”国家(=コミュニティ)”を選べる時代になる。共通の価値観を持ったインターネットで共通の価値観を持つ人々が集まる”国家”に複数所属できる。生まれた時に所属する国が決まっているのはまるで「士農工商」のように不自由な社会であり、よりよい社会へアップデートされる

  8. 少子高齢化の日本のように、福祉や医療に税金を使われすぎると、未来ある若者にお金が回ってこない。共通の価値観を持つ人々が集まれば、”税金”が自分自身と同じ価値観で使われていくのでよりハッピーな社会が訪れる

  9. 起業家視点では、エクイティを汚さない調達手段となりえる。議決権を紐づけない形での調達が可能となる。また、2019年10月時点では日本国内でNFTによるクラウドセールを実施するには良い環境にある

  10. 非中央集権的な仕組みを突き詰めていくと、例えば、議会や投票をみんなで決めてスマートコントラクトに実装し、みんなが支持するルールに則って、コミュニティの意思決定がなされる。また、時代にそぐわないルールになったらそのルール自体も全体の意思で変更可能な仕組みも作れ、恒久的に運営できる。これが実現することにより、「人の下に人を作らない」、みんなが支持するシステムの元に「人は平等」になりうる

トークンエコノミーという言葉があまり馴染みがないこともあり、トークンエコノミーと聞いても、定義が広いふたつの言葉が組み合わさって、人が考えるイメージもバラバラな気がしています。ただ、トークンエコノミーが社会の何を変えてくれそうか、ということはブロックチェーンのプロダクトを作りながら見えてきたことも多く、こちらにまとめてみました。

 

私自身も株式の世界のスタートアップに身を置いている立場でありつつ、資本主義社会において、人々や企業はどう社会に貢献するべきか、という視点で物事を考えたときに、いまの既存の仕組みがベターではあれこそベストではないと感じます。

 

例えば、社会にとって人々の経済格差が広がることは、社会秩序を不安定にさせ、巡り巡って豊かさを享受している人々にも大きな影響を与えることは、人類の歴史を振り返ってみてもよく理解されているところだと思います。

 

そんな中、株式市場における資本家の要請は、出資している企業の短期的な利益追求であり、市場での評価もそうした企業や経営が称賛される風土ができあがってしまっています。

 

企業が将来にわたって発展していくための資本や利潤を生み出すことで、研究開発や先行投資につながり、次のよりよいサービスが生まれるエコシステムが循環されていくため、利益の追求それ自体は否定されるものではないことは明白です。

 

ただ、そうした強い企業によって過度な利益追求がなされた場合、業界構造として苦しむ企業や個人を増やしてしまったり、それに付随する労働者の豊かさを搾取している可能性さえあります。

 

また、それが長期間にわたると社会格差を広げるひいてはそうした豊かさを享受している会社や関係者に影響を及ぼすとしたら、いまの社会制度そのものを改善されていくことは、(仮に短期的に企業の利潤が減ったとしても)よりよい社会の実現に繋がっていくはずです。

 

こうした一部の会社が生み出した利潤が、これまでは還元されなかったもっと幅広い人々に還元することができるトークンエコノミーの考えは、中・長期視点で考えたときに、よりよい社会にしてくれる力強いパートナーになりえるのでは、と思います。

 

また、これまでの資本主義的価値観においては、社会にとって良い活動をしたとしても、金銭的リターンがないからと人々にとって本当に価値あるサービスが提供できなかったことも、コミニュティ単位でその活動が是とされることであれば、その本質的かつ社会にとって真に役立つ貢献を続けることを、金銭的リターンを紐づけで活動できるようになり、そしてそうした活動をしている人こそ称賛される本当のより良い社会が実現されると思います。

 

一言で言えば、これまでの「稼ぐヤツが偉い」社会から、「社会を良くするヤツが偉くて稼げる」に変わる、ということです。これって超気持ちいいですよね。

 

こと日本においても、いわゆる勝ち組・負け組の社会格差が広がっていることは、社会制度の新たなアップデートが必要になってきていると私は考えています。ここ最近の事件は「炭鉱のカナリア」なのではと危惧し、先日記事を書きました。

https://note.mu/hajimeataka/n/ned25740c6a63

 

トークンエコノミーの拡大と浸透が、人々の社会格差を縮めてくれることを期待せずにはいられないのです。